大井川通信

大井川あたりの事ども

『鳥の博物館』なぜなぜ理科学習漫画 1966

僕が子どもの時から学習漫画というものはあったが、自分で持っていた記憶があるのはこの一冊だけだ。出版時期や内容からいって間違いないだろうと注文したのだが、郵送で届いた本には、古い友人に再会した感激はなかった。こんな本だっけ。しかし、ところどころに見覚えのあるページを見つけて、じわじわと記憶がよみがえってきた。

その理由は推測できる。小学生の僕は、自動車や飛行機と同じように、恐竜やクジラには夢中になって種類をおぼえたことはあったが、鳥を特別に好きになった記憶はない。だから、この本は漫画として流し読みしたくらいで、食い入るように読み込んだ本ではなかったのだ。

鳥の種類やトピックごとに、友人同士や家族などのキャラクターが掛け合いで解説をする。古風ですこし稚拙な絵柄が好ましい。当時は思い入れはなくとも、あとで鳥好きになる上での基礎的な知識を与えてくれたのがわかる。

だからこの本が懐かしくなるのは、40代で本格的に鳥見を始めてからだ。田畑の上でホバリングしながらせわしなくさえずるヒバリの高鳴きを初めて聞いた時に、まず思い出したのはこの本だった。あの漫画が描いていたのは、これだったのかと。

ところで、「ながいきくらべ」のページを見ると、棒グラフでハヤブサが160年、トビは120年、カラスは100年とあるが、これは都市伝説なみにちょっとひどい。ネットで信頼できそうなデータをひろうと、うまく生き延びた個体で、小鳥では10年、大型のカラスやトビやミサゴなら20年以上で30年を超える寿命の記録もあるらしい。これでも十分に長寿である。彼らの賢者のような風貌の理由がわかる。

「はやさくらべ」のページでは、ツバメが298キロ、ハヤブサは280キロとあって、これも眉唾かと思ったが、全力での飛行ではありうる記録のようで驚かされる。