大井川通信

大井川あたりの事ども

ハチの葬式

約束の午後1時に、もち山のクロスミ様の前の道を抜けて、山向こうの葬祭場に家族でむかう。ハチが悪さをしたとき、「もち山にすててイノシシに食べさせちゃうぞ」と妻が叱っていたことを思い出す。

葬祭場は、納骨堂や共同墓地を兼ねているので、休日のためかお参りにきている家族も何組かいる。祭壇のある部屋で、ハチは小さな木棺に入れられて、白い布団にくるまれる。木棺には斎場が用意した花束と、持参したお菓子や食べ物、遊び道具のペットボトルのフタを入れる。お焼香とお別れの時間があって、「また会おうね」「こんど生まれるときは、丈夫な身体で生まれてくるんだよ」と妻が声をかける。

火葬の間は、一時間ばかり家族で控室で待った。骨は小さなハチの身体の形で残っている。とても箸ではさめる大きさではないので、次男と三人で、指先でつまんで骨壺に移した。骨壺は、元気な男の子らしい青いカバーをかけてもらう。いつでも納骨はできるそうだが、家族で相談していたとおり、家で引き取ることにする。

担当の職員さんに聞くと、できて13年の斎場で、その時から勤めているという。以前大井炭鉱についての聞き取りで、山向こうのこの場所にも炭鉱(勝浦炭鉱)があったと聞いていたので尋ねると、やはり山を削った工事の時に石炭の層が掘り出されたそうだ。地元の業者の人も炭鉱の跡地と言っていたそうだが、当時の施設は残っていないという。いつかは訪ねるつもりだったが、ハチがお世話になるとは思わなかった。

昨日はとても寒い日で、ハチは冬の寒い日に我が家に自分で歩いてやってきて、突然また寒い日に去って行ったねと、控室の待ち時間に家族で話していたけれど、外に出ると、今日は日差しが暖かく斎場の周囲の草花も美しい。このまま家に帰りたくないと妻がいうので、ハチを連れてドライブに出かける。