大井川通信

大井川あたりの事ども

タカラダニとナミテントウ

家の垣根のレッドロビンがところどころ虫害で枯れてしまったので、思い切って抜いてしまって、擬木のフェンスを立ててもらった。枯れてない木も伸び放題だったので、庭がだいぶ明るく、広くなったように感じられる。

レッドロビンの垣根については、家族のもめごとの種だったので、よけいスッキリした気分だ。剪定を人に頼む余裕はないが、面倒くさがり屋の僕は、妻から頼まれてもずるずると先延ばしにする。お互いのいらいらがつのり、けんかとなる。

息子たちが大きくなってからは、夫婦ゲンカを見かねて、自分たちでバッサリ切ってくれたのはありがたかった。しかし、近年は、虫害がひどくなったこともあって、まったくの手つかずだった。

人口木の板を何段も横に渡した板塀は、どうしても単調で閉鎖的になる。そこで、上から二段目は、曲線をあしらったアルミパネルを並べて、見通しが効くようにした。工事費がかかった分以上の見映えで、夫婦そろって何度も道から見上げて、うんうんと満足げにうなずき合う。見苦しいケンカのことなどすっかり忘れてしまって。

そうして朝晩飽きもせずに板塀をながめていると、ある時、塀の表面を微小な真っ赤な粒のような虫が、あちこちで歩き回っているのに気づいた。樹木ならともかく、樹脂の板の上である。不思議に思って調べると、タカラダニだった。家屋の周囲のコンクリートブロックなどで、わりと一般的に発生するらしい。人畜無害ということだが、とにかく目障りなので、せっせと駆除する。

ようやく、タカラダニが見えなくなった今日、小さな黒いゾウリのような形をして、お腹のあたりがオレンジ色の幼虫が、ぞろぞろとフェンスを上ってくる。何だかわからないので駆除しかけると、妻から、これはテントウムシの幼虫で、益虫ではないかと指摘される。なるほど。調べると、たしかにナミテントウの幼虫だった。フィールドワーカーの面目まるつぶれである。

樹木と間違えて上ってきたのだろう。エサに行き当たらないで、死んでしまうかもしれない。僕は、はがきの先に幼虫を載せて運び、隣のケヤキの太い幹で歩かせてみた。ここにはエサの油虫がいるかはわからないが、とにかく食いっぱぐれはないだろう。ケヤキの健康にだって多少はいいことがあるかもしれない。やがてケヤキから、たくさんのテントウムシが飛び立つ姿は素敵じゃないか。

僕は目につく限りの幼虫を、ケヤキにせっせと移し続けた。