大井川通信

大井川あたりの事ども

役場とヒバリと山伏様の銀杏と

本当に久しぶりに、休日の朝の町を歩く。馬場浦池では、カイツブリの親子を発見。もう一人立ちして、立派に潜水を繰り返している子どもだが、まだエサはうまく取れないのだろう。水面に出るたびに親が口移しでエサを与えている。

旧街道沿いを歩いて、旧役場あとへ。やはり解体されて、更地になっている。ここは、市町村合併前に、大井が所属する町の役場だったところだ。建物の隣に新しい住宅があって、そこのご主人に頼んで、内部を見せていただいたことがある。昔の役所らしい立派な作りで、二階には私設民俗博物館のような展示があった。その時、近々処分しないといけないと話していたが、新しい住居ごと解体して引っ越してしまうとは思わなかった。老朽化でも建て替えでもなく、味気なく更地になってしまったあとの空虚感というのは、いったい何だろう。いかめしい門柱も、どこに立っていたかさえわからない。

八並川を渡って、農耕地へ。川沿いの電柱のてっぺんでホオジロがさえずっている。畑地の上空では、ヒバリの高鳴きだ。バタバタと羽ばたきながら空中で停止していると見せて、少しづつ上昇していく。にぎやかなさえずりもだいぶ遠くなった。降りてくるまで聞いていようと意地になると、10分くらい待たせて、ゆっくり高度を下げてから、最後は石のように落下して畑地に隠れた。

アイドル歌手でも、激しいダンスがある曲は、ほとんどが口パクだ。他の小鳥と違い、激しくホバリングしながら、息継ぎもないくらいの勢いで生歌を歌い続けるのはたいしたものだ、とあらためて感心する。

大井に入る。亡くなったムツ子さんの家の前で、息子さんが作業をしている。大井始まった山伏様の銀杏の木は、数年前短く切られたが、葉をつけて小ぶりながら丸く自然な樹形に戻った。もとに戻ってしまいましたね、と声をかけると、笑いながら返事をしてくれる。

公民館の前で単眼鏡で鳥を見ていると、不意に声をかけられる。村茶乎のなっちゃんだ。今日は、田植えのイベントをやるらしい。僕は、大井川の堤の上を、風にふかれてふらふらしながら歩いて戻る。