大井川通信

大井川あたりの事ども

ヒメハルゼミの研究(その4)

梅雨なのに今日も晴れ。まだ明るい午後7時に家を出て、徒歩で目的の場所に向かう。やはり大井川歩きの基本は徒歩でないと。村で常緑広葉樹の林が残っているのは、鎮守の森以外では、かつての墓山だろう。今では大井区の納骨堂が造られているが、その背後の高台には、旧家の大きな墓がいくつか残っており、街道が隣接しているものの昼でも薄暗い林になっている。大木は少ないが、和歌神社の裏山と同じくらいの広さはある。

近づくと、特徴のあるヒメハルゼミの声が聞こえてくる。林の中に入ると、セミの声は林の一角の斜面の木々からだけ聞こえることに気づく。数は少なく、音量にも迫力はない。それでも、比較的保存されやすい林で少数でもヒメハルゼミが生き延びているのがうれしかった。

そういえば、宗像大社でも鎮国寺でも、広い森の中で鳴いているポイントはごく一部だった。狭い林全体で声が響き渡る和歌神社のような環境は、やはり貴重なのかもしれない。

念のため、大井区のもう一つの神社である多賀神社まで歩く。途中、街に点在する木々から、アブラゼミやヒグラシの声が聞こえる。多賀神社は石段の上にあり、木々に囲まれているが、林の面積は和歌神社の三分の一もないだろう。セミが鳴く気配はなかった。

宵闇が迫る中、あわてて和歌神社まで戻ると、7時45分。どうやら演奏の最後には間に合ったようだ。7時52分には最後の声が途絶え、鎮守の森は眠りについた。