僕が子どもの頃に持っていて、繰り返し読んで、おそらく今でも書店に並んでいる名作童話。カエルの話なので、何十年ぶりかで読み直してみる。
どうしてこの話が好きだったか、あらためてよくわかった。物語の不思議さと面白さ、言葉の魅力が詰まっている。
かんたは、ある日道ばたで赤目のカエルのおもちゃをひろう。庭にカエルのお城や池を作って遊んだり、親に頼みこんで、家の中でいっしょに寝たりする。
次の日、雨が降り出すと、池の水があふれて海になり、いつのまにか話すことができるようになったカエルのエルタといっしょに、「うたえみどりのはっぱごう」という名の船に乗って、冒険に出かけることになる。
カエルのお城のある「うたえみどりのしま」に着くと、らいおんみどり(緑ライオンではない)など、楽しいキャラクターがいて、 彼らも、エルタとともに、かんたの家の庭に遊びに来たりもする。
最後は、カエルのお城「うたえみどりのしろ」で、エルタの盛大な結婚式をみんなで楽しんで、物語はおわる。
子どもにとって、おもちゃは友だちだ。子どもは、おもちゃとともに空想の世界で遊ぶ。物語の中で、おもちゃのエルタが、カエルの王子のエルタに、ごく自然に入れ代わるシーンが、子ども心にも、不思議で魅力的だった。
空想と現実の二つの世界は、子どもの心の中でしっかりむすびついている。そして二つの世界を結ぶゲートは、呪文のような言葉と歌声の力によって開かれる。その神秘を、こんな素敵な物語にして届けてくれた著者に感謝したい。