大井川通信

大井川あたりの事ども

次男の子育て(幼稚園)

ワタルの幼稚園は、キリスト教系の園だった。僕が住んでいる住宅街がある丘のはずれの森の中の木造の園舎で、近くにはため池と小さな教会があった。僕もきまぐれで、一度だけ日曜の礼拝に参加したことがある。年配の園長先生が牧師だった。

やはりクリスマスが大きな行事で、園児全員がお芝居をした。ワタルは一年目はマリヤ様のお使いの役になり、セリフがあった。えすさま、えすさま、と聞こえたのは、イエス様という呼びかけだった。ちなみに、二年目は牛の役だった。

妻が送り届けると、補助の先生の膝の上にちょこんと腰かけて、一日中面倒を見てもらっていたようだが、同級生の中にも、ワタルを気にかけてくれる女の子がいた。たしか。オヤマダユウキちゃんという名前だった。

発達が遅れていて、まだ赤ちゃんみたいなところもあるワタルを弟のように思ってくれていたのだろう。妻も、ワタルにミッキーマウスの着ぐるみなどを着せて楽しんでいた。幼稚園での写真をみると、いつもユウキちゃんがワタルの横に付き添うように並んで写っている。

それだけでなく、幼稚園の最後にはラブレターをくれて、そこにはプロポーズの言葉も書かれていたと思う。

言葉がうまく操れなかったワタルに、小学校入学前の記憶はない。それでも両親の話から、幼稚園時代に自分にもモテキがあったことを知り、得意に思っているふしがある。ユウキちゃんのご両親から、ユウキちゃんにも重い持病があるという話を聞いた。それでワタルをかわいがっていてくれたのかもしれない。

幼稚園卒業後、ユウキちゃんには会う機会はない。ただ今でも彼女の家の近くを通りかかる時、彼女が元気でいること、そしてワタルのことを覚えていてくれることを密かに願うようにしている。