大井川通信

大井川あたりの事ども

イタチがいたっち

夜、近所で車を走らせていると、前方の路上を低く、さっと何かが横切っていく。その妙に細長いシルエットは、道端の草原に吸い込まれるように消えていった。見送ったあとで、すぐにイタチだと気づいた。

20代で車を乗り始めたころ、地方暮らしだったから、農村部にドライブに出ると、イタチがひかれているのを見かけることがあった。たぶん、タヌキも多かったはずだが、都会育ちにはイタチという生き物が物珍しく、印象に残っているのだろう。

若い時の記憶というのは恐ろしいもので、イタチの死体をいくつも見かけた夜のことまで、はっきり覚えている。あれは、訳ありで夜中に山口の萩までを往復したドライブだった。

そのあと20代半ばで東京に戻り、しばらく塾講師をしていたのだが、そのときほど僕の人生でダジャレを作ったことはないと思っている。冗談ばかり言う面白い講師というイメージがあったためか、最前列の生徒が、ノートに正の字で僕が口にするギャグを数えていたこともあった。

その時のギャグの一つに、同じ言葉でつくったオリジナルなダジャレをたたみかける、という大技があった。そこには、できれば流れやストーリー性があったほうがいい。

「この時計をとっとけい」「こんな時計はほっとけい」「この時計とその時計をとっけいて」「この時計を見ながら問題をとけい」という感じ。

イタチシリーズというものもあって、あの夜中の萩ドライブの情景が盛りこまれている。

「(国道を走っていると)あんなところにイタチがいたっち」「(車を降りて)イタチにさわればいいタッチ」「(気絶していたイタチが目を覚ましたので)イタチさん、どうも失礼いたちました」