大井川通信

大井川あたりの事ども

キジも鳴かずば

職場近くの農耕地で、道の脇に大きな鳥の影が見えた。車をとめてよく見ると、キジのオスである。数年前、このあたりでメスを見た。家の近所の畑でつがいを見たのは、もう10年近く前のことだ。鳥見を続けていて、見たのはそれきりだから、市街地が広がるこの地域では珍しい鳥なのかもしれない。

職場の若い人は、クジャクがいたと騒いでいる。なるほど緑や青や赤が混じった派手なカラーリングは、ちょっと異国風だ。実際に何年か前、大井にクジャクが現れて、原田さんの鶏小屋の屋根にいる写真が新聞に載ったこともあるのだから、ややこしい。

しばらく観察して、面白いことを発見した。車を降りて近づくと、さすがにやぶに姿を隠す。しばらくしてまた出てきたところ、車ですぐ横に乗り付けても、まったく警戒せずに動かないのだ。この大きな鉄の箱は、危険なものとは認識してないらしい。

車窓から間近に見ると、足に金属のリングをはめている。ネットで調べると、どうやら放鳥したキジの印のようだ。他県だが、リングの回収を猟師に呼び掛けているキジ、いや記事もあった。

今回キジがいたあたりでは、ふだんコジュケイを見かけることが多い。コジュケイも、100年前からの放鳥で、日本に増えた鳥らしい。放鳥とか猟とかいうことには、いい悪いとかではなく、どうもピンとこない。飽食の時代に気楽に鳥見をするという文化にどっぷりつかっている僕には、まったく異質な文化なのだ。