大井川通信

大井川あたりの事ども

『小学館/少年少女世界の名作文学』 全50巻 1964-1968

実家の隣の従兄の家にあった子供向け文学全集。

僕たち姉弟は、隣の家を図書館がわりにしていたから、このシリーズにもだいぶお世話になった。僕は拾い読み程度だったけれど、本好きの姉は全巻を通読していたのではないか。

一冊がかなり大きく分厚い本で、クリーム色の箱入りの装丁。イギリス編、アメリカ編というように国別、地域別で何冊かごとのシリーズとなっていた。ゴーゴリの『外套』を初めて読んだのも、この全集のソビエト編の一冊だったと思う。

ネットで当時の読者の証言を読むと、毎月一冊が配本されていたらしい。僕が小学校高学年になって、この全集に興味を持つようになったときには、従兄の部屋で本棚一つを占領してずらりと並んでいた。

両親が教員だった従兄の家と、工員の父親一人が稼ぎ手だった我が家とでは経済力に大きな開きがあったのだが、僕たちはそれを当たり前として受けとめ、むしろ上手に利用していたような気もする。

見栄っ張りなところもある母親は、担任の先生の家庭訪問の時など、従兄の家から百科事典を借りてきて、ちゃっかり居間に並べたりした。その時従兄が自分の百科事典が箱だけになっているので驚いたというエピソードを聞いたような気がする。

古本屋などでは見当たらないが、場所ふさぎとなるこの全集は、ネットオークションの出品は珍しくないようだ。もういちど手にとってみたい気持ちは強いが、半世紀以上も前の子どもの本だから、たいていはボロボロの状態のようだ。本についてだけは潔癖症の僕は、残念ながらちょっと手が出せないでいる。