大井川通信

大井川あたりの事ども

家族旅行と松陰神社

年末にバタバタとホテルを予約して、元日から一泊二日で家族旅行にでかける。家族4人で泊りがけのドライブに出かけるのは、ほとんど10年ぶりだ。長男の高校合格が決まって、そのお祝いもかねて津和野に行ったのが最後だった。それ以降は、子どもたちも自分たちの生活が中心になって、自然と家族主体の行動からは遠ざかっていったのだ。そもそもこの間は、帰省以外に旅行する余裕がなかったのかもしれない。

行きの車の中や観光地でも、妻が一番はしゃいでいた。僕も長男に運転をまかせてだいぶ楽ができた。もう本当に最後かもしれないが、こうした機会が得られたことを、感謝しないといけないと思う。

偶然予約できたホテルは、萩の老舗ホテルだった。萩城址に近い浜辺に数軒ホテルが並んでいるのだが、その中の一軒に、新入社員の頃、社員旅行で宿泊した記憶がある。たまたま入社した会社で北九州支社に配属にならなかったら、そして会社を辞めたあともこの土地で暮らす決断をしなければ、この同じ浜辺に泊まることもなかっただろう。

元日なので、松陰神社に初詣をする。松下村塾で有名な場所だが、吉田松陰を祀る神社ができていて、そこに大勢の人が当たり前に初詣していることに驚く。日本の神社というシステムは、実に融通無碍だ。大勢の神様以外も、有名人も動物も神様になれる。勧請という方法で、いくらでも特定の神様の出張所を増やすこともできる。

近くの東光寺に寄る。ここには立派な禅宗様の仏殿がある。禅宗でも黄檗宗の建物なので、武骨で中国風なイメージはあるが、大きく翼を広げたような二重屋根や、広々として背の高い内部空間に、しっかりと禅宗様の魂はこもっている。

夕方萩の武家屋敷の跡を一人で歩いた。幕末の著名人のゆかりの場所があちこちにあって、この小さな地方都市が日本の近代化において果たした役割に、不思議な気持ちにとらわれる。いろいろ説明はつくのだろうが、根本のところでは、歴史にも偶然という要素が強く働いているのだろう。