大井川通信

大井川あたりの事ども

高学歴ニートにおごる金はない

次男には、子どもの頃から不思議な才能が有って、家にあるおもちゃを組み合わせて、自分で新しい遊びのルールを思いついたりした。そんなとき、おとなしい長男は、4歳年下の弟の考えた遊びに喜んで加わっていた。

中学の時の特別支援学級の担任に久し振りに家族で会いに行ったとき、先生から、ドローンって昔ワタル君が考えていたやつじゃないの、と真顔で言われたことがある。ドローンが実用化される以前に、小さなヘリコプターにカメラを付けて飛ばすことを真剣に考えていたそうなのだ。

進学や就職のことでは、次男のことは、両親で手探りでサポートしてきた。友人関係や結婚、生活のことではまだまだ家族で知恵を絞らないといけないだろう。けれども、今年成人を迎えて、生き方の芯においては、親がかなわないくらいしっかりしていると感じられるようになった。ちょっと頑固すぎるくらいに。

就職して以来、年末か年始に一度、次男を迎えに行くついでに職場に手土産をもって家族であいさつするようにしている。今年で3回目だから、次男もちょっと照れながらも、ずいぶん職場の人間の顔になったような気がする。

その帰りの車中で聞いた話。

長男が転職のために家に戻っているので、家族の会話もだいぶ増えた。懐具合の厳しい長男が、高額の貯金を誇る次男に冗談でおごってほしいと言ったときに返したのが、標題のセリフだ。相変わらず、短文・単語での反射神経には目を見張るものがある。

笑って受け流していたという長男も、どうして、びっくりするほど大人になった。僕も最低限のアドバイスはしたけれども、実際に会ってみると、その先に目を向けているのがよくわかった。もう大丈夫。どうしても次男の陰に隠れて上手にサポートできずに気をもんできたけれども、ようやく安心できる。

こうなると、面倒をみないといけないのは、なにより自分自身のことだと気づく。あちこちへばっているし、先も短い。しかし、子育てで培った経験と手法を検証する素材としてこれに勝るものはないだろう。