大井川通信

大井川あたりの事ども

身近なことばは4音になる

『日本語をつかまえろ!』(飯間浩明  2019)から。毎日小学生新聞の連載をまとめた本だから、ふつうの日本語論よりも、ずっと身近なやさしい話題が多い。

「あだ名」のトピックで、木村拓哉をキムタク、昔の事例として榎本健一エノケンと呼ぶことを紹介する。親しみをこめ、呼びやすくするためのあだ名は「愛称」とも言われる。しかし続けて、Perfume樫野有香を「かしゆか」と呼ぶことを紹介するのはどうなのだろうか。ファン以外が知っている知識とは思えないのだが。

それはともかく、「かしのゆか」の愛称が「かしゆか」であることには、僕もすこし不思議な感じをもっていた。せっかく省略するのに、たった一文字(一音)しか減っていないのは効率が悪い気がする。ただし、かしゆかは変に耳に残る愛称だ。

著者は、その理由を、日本語は4音にすると言いやすくなるので、身近な言葉は4音になる傾向があると説明する。コンビニ、ファミレス、パソコンなどなど。

なるほど。それで思い出すのが、大井の神様ヒラトモ様だ。

こちらの神様は、略する前の大元の名前が、実は、平知宗(たいらのともむね)なのか平知盛(たいらのとももり)なのか、あるいは別の誰かなのか、はっきりしていない。しっかりした伝承があるわけではないからだ。にもかかわらず、正式に神社にするときに、えいやっと平知(ひらとも)神社にしてしまったというのが面白い。

しかしそんな無謀な呼び変えが受け入れられて、ヒラトモ様という不思議な呼称が定着した経緯が、ちょっと謎だった。4音の法則は、この謎に答えてくれるような気がする。