大井川通信

大井川あたりの事ども

生き物の春

庭仕事をしている妻が、人懐こい可愛い小鳥を見つけたという。お腹がオレンジで、背中が黒で、白い紋があって・・・ジョウビタキにちがいない。基本的に人なれしているジョウビタキの中にも、びっくりするくらい人懐こい鳥がいたりする。

でも、ジョウビタキなら冬場の縄張りを捨てて、小さなグループに集まって、海の向こうの大陸に帰っていかなければならない頃だ。この時期、故郷での繁殖を待ちきれずに、細い美しい声でさえずるのを聞いたこともある。

別の日、出勤のため玄関を出ると、隣家の庭からウグイスのさえずりが聞こえた。自宅に訪れる鳥たちとの出会いは格別だ。カササギヤマガライソヒヨドリの姿を思い出す。

また別の日、職場近くの海岸の熱い砂の上で、ひっくりかえっているコガネムシを見つけた。足を宙に向けてゆっくりと動かしている姿を見ていたら、家にいる猫の九太郎のことを思い出した。この虫も生きたいのだろう。指先でつまんで、木陰の草むらのなかにそっと投げ入れる。

仕事から帰ると、今日、九太郎が蝶々を食べたのだという。部屋の中に紛れ込んできた黒い蝶を、窓枠のところで捕まえて、ペロッと美味しそうに食べてしまったというのだ。考えてみれば、いくら肉食といっても、体重3キロばかりの小柄な猫にとって、ネズミやカエルなど大型のえさが都合よく見つかるものでもないだろう。野生での主食は昆虫なのかもしれない。キャットフードより美味しかったかな。