大井川通信

大井川あたりの事ども

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『アジア辺境論 これが日本の生きる道』 内田樹 / 姜尚中 2017

内田樹の本を久しぶりに手に取った。 相変わらず、鮮やかな指摘(グローバル化で、自由という概念が「機動性」に改鋳された等)にうならされる一方、言葉の失速を感じる場面も多かった。 随分前、内田樹が中年過ぎて、学究と子育ての生活から論壇にさっそう…

ガクエン退屈男 永井豪 1971

子どもの頃読んで、忘れがたかった漫画。そう話したら、友人が貸してくれた。 1960年代後半の学生の反乱が、70年代に入り、あらゆる学校の広がり、教師が武器をとって学生を鎮圧し、学生ゲリラたちが解放のために戦う時代となる。文字通りの殺しあいであり、…

ため池のカイツブリ

数日前からため池の水がみるみる少なくなり、もう真ん中付近に大きな水たまりが残っているだけになった。カイツブリの夫婦の姿は見えなくなったが、今年生まれたヒナ4羽は、日に日に小さくなる水面にポツンと取り残されている。カイツブリは成鳥でも飛ぶの…

高階杞一詩集 ハルキ文庫 2015

1951年生まれの詩人の15冊の詩集からのアンソロジー。今では小学校の教科書にも載っている。平明な言葉で、素直な感情のひだをやさしくうたう。もちろん食い足りない人はいるだろうが、それが彼の選択した「詩」なのだろう。 僕は、突き抜けた設定で飄々と押…

アメリカ人はどうしてああなのか テリー・イーグルトン 2017

原書は2013年にアメリカで出版、原題は『大西洋の反対から-ある英国人のアメリカ観』というちゃんとしたもの。著者はイギリスの高名な批評家だが、読んだのは初めてだ。 ここにくだけた調子で書かれている内容は、日本ではおそらく西欧文化論とかポストモダ…

原っぱ

東京郊外の僕の実家の隣には、雑木林の空き地があった。そこを原っぱと呼んで、生活ゴミを燃やしたり、キャチボールや木登りや栗拾いをしたり庭がわりに使っていた。 付近の空き地は瞬く間に住宅に埋め尽くされたが、原っぱだけは、家々の隙間に何十年も残り…

元号ビンゴ(その2)

新たな目標ができたので、出勤前の短い時間で、近隣を回る。オオイ区の村社では、壊れかけた常夜燈に「寛政」の年号を見つけ、観音堂脇の石塔には「明和」の文字が。これは以前のコミュニティだよりの記事で、「明治」と読み間違えて紹介されていたもの。早…

江戸の元号

江戸時代の元号は36個ある。 以前から順番に暗記しようと思っていて、近ごろようやく覚え始めた。それと同時に、これも前から構想していた、大井川歩きの中で江戸の元号のコンプリートを目指す、という新しい遊びを始めることにした。いわば、路傍の元号を…

観光客の哲学 東浩紀 2017

とてもいい本だった。 リベラリズム、ナショナリズム、グローバリズム、そして観光客。キーワードは少ないが、論述は驚くほどていねいだ。 数少ない精選された概念で世界のリアルな見取り図を描くという、言うは易く行うは難い現代思想の課題をあっさり果た…

オオスカシバ

数日前、自宅の駐車場で、オオスカシバの姿を見た。すぐに隣家の庭に消えてしまったが、透明な羽に黄色の太い胴体が目に残った。高速で羽ばたいてホバリング(空中停止)もできるから、蜂のようにみえるがスズメ蛾の仲間だ。 実家の庭には、クチナシの垣根が…

オニヤンマ

七月になってから猛暑が続き、早朝でないととても散歩などできなくなった。朝6時過ぎに家を出て、クロスミ様の鎮座する里山をこえて、モチヤマの集落に入る。 小川沿いの田舎道で、いきなり大柄な誰かに出くわしたと思ったら、オニヤンマだった。 八木重吉…

新米建築士の教科書 飯塚豊 2017

著者は、「建築士になるための勉強」の機会はあっても、「一人前の建築士として食っていくための勉強」については、テキストもなく学ぶ方法もなかったという。大学では実務に役立つことは教えないし、会社では実務の中で長い時間をかけて身に着けることが要…

授業がうまい教師のすごいコミュニケーション術 菊池省三 2012

菊池メソッドで有名な著者の本を初めて読んだときは、驚いた。子どもをほめればやる気を出して学力も上がる、というくらいの話だと早合点していたからだ。実際はそんな生やさしいことではなかった。 彼は荒れた学級で、子どもを一人ずつ教室の前に立たせ、級…