大井川通信

大井川あたりの事ども

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

否定の言葉・肯定の言葉

僕と安部さんが昔参加していたグループのリーダー格の人に連絡をとって、久しぶりに会うことになった。やはり安部さんが倒れたことがきっかけで、それを伝えておきたい気持ちがしたのだ。 もう15年も前のことだからはっきり覚えているわけではないが、安部さ…

トコトコとペコン(続き)

数日して信号機の近くで、またあの女の子らしき姿を見つける。そのあたりは歩道がひろく、ベンチも設置してあるのだが、女の子は、誰か友だちを待っているのか、真赤なランドセルを広げて、中のモノを取り出している。 何をしているのだろう。子どものするこ…

大井川歩き(空振り編)

旧大井村には、その北側に100メートル程度の里山の丘陵が連なっている。南側の50メートル程度の丘陵は、開発されて住宅で埋め尽くされており、僕の家もそこにある。北側の丘陵の峰の東の端にヒラトモ様が鎮座しており、西の端にクロスミ様のホコラがあるとい…

『悲痛の殺意』(『奥只見温泉郷殺人事件』改題) 中町信 1985

読書会で漱石を読むのを苦労したから、小説を楽しんで読みたくなった。中町信(1935-2009)の長編推理小説が再刊されたので、読んでみた。中町さんでも初期の込み入った倒叙トリックを使ったものでは気が休まらない。温泉地ものだから、気楽に読めるのではな…

『彼岸過迄』 夏目漱石 1912

読書会の課題で読む。日本文学の中で、漱石と村上春樹だけは、ちゃんと読んでおきたいとぼんやり考えていた。前者は、柄谷行人や佐藤泰正先生らの漱石論があるためだし、後者は親しい安部さんが好きだからという理由からだ。 自分の感想を作ったあとで、柄谷…

トコトコとペコン

押しボタン式の信号機のある横断歩道で、小学校一年生くらいの女の子が、手をあげてトコトコと渡る。渡り切ると、両側の自動車(一台は僕の車)にむかって、それぞれペコンとお辞儀をした。 道を渡っているとき、女の子の頬に光るものが見えた気がしたので、…

やっぱりクロスミ様の出番でした

黒尊(クロスミ)様をお参りしようとして里山の林道に入ると、すぐ先をお年寄りがサンダル履きで歩いている。この辺りで出会う地元の人はマツシゲさんくらいだが、少し様子が違う。声をかけると、林道のすぐ下に住んでいるフジモトという人だった。 林道の途…

百舌鳥のゆえん

大井川歩きをしようとして、玄関を出て一歩目のまだ玄関ポーチにいるときに、足が釘付けになった。一歩外に出ると、そこがフィールドだというのが、大井川歩きのよいところだ。自画自賛だが。 隣家の屋根のテレビアンテナの上でモズが鳴いている。ケッ、ケッ…

『哲学とは何か』 竹田青嗣 2020

読書会の課題図書でなかったら、竹田さんの新著を手に取ることはなかっただろう。しかし、せっかく読むなら、竹田さんの本の「本質」についての自分なりの新しい納得をみつけたいと思った。竹田さんを新しく読むメンバーが、はたしてこの本を「面白い」とよ…

同窓会の連絡

3月まで働いていた職場から電話がある。僕の中学校の同級生という女性から電話があったそうで、携帯の番号を聞いているので、連絡してあげてほしいという。 名前を聞いても、あの人だという明確な像を結ばない。しかし、まったく知らない人という感じでもな…

テンちゃんの御朱印帳

隣りムラのライバル(とかってに僕が思っている)テンちゃんは、コロナ禍にも関わらず見る間に活躍の場を広げている。クラウドファンディングでゆるキャラの着ぐるみを作ってからは、得意のSNSと行動力で、あちこちに出没し、とうとう市の方も秋波を送りはじ…

『暗黒神話』と竹原古墳

古事記を読んでいて、諸星大二郎の『暗黒神話』を読みたくなった。古事記のエピソードがストーリーに組み込まれているのを思い出したからだ。 たとえば、タケミカズチに敗れて諏訪に逃れたタケミナカタは、漫画の中では、洞窟に幽閉された両腕のない怪物とし…

『英語化は愚民化』 施光恒 2015

扇情的な題名に反して、というか内容はまさに題名のとおりなのだが、実にまっとうな議論が展開されている。語学の専門家ではなく、政治学者の手になるもののためか、目配りが広く近代化のメカニズムからの立論には説得力がある。 大きな風呂敷を広げたうえで…

ヒラトモ様ツアー

ひろちゃんの親族を連れて、ヒラトモ様を案内した。本当は、大井の他の「観光スポット」も案内したかったのだが、ヒラトモ様だけでおなかいっぱいで、あとは簡単な説明だけですませた。 ひろちゃんの弟のタケシさん(奥さんもあとから参加)、大阪から参加の…

庚申塔の消失

休日早朝の大井川歩き。ババウラ池の底の水たまりには、エサをあさるサギがいるばかりだ。カイツブリのヒナの凛々しい姿が目に浮かぶ。君のことは忘れないでおこう。 どこに行きたいのか、どのくらい歩きたいのか、なかなか方向が定まらずに、駅の方面にぶら…

ホルモンと桃太郎

数人で焼肉と本場のホルモン鍋をつつく。とある業界の大物が主役の会だったが、なかなか気さくな好人物だった。その人の話。 ホルモンとは、大阪の方の言葉で、ほおる(捨てる)もん(モノ)からきているという。これは、なるほどと思える説だ。 川上から桃…

クモとムカデとヘビ

職場の網戸に変な虫がしがみついている。一センチばかりの小さな身体が、薄い緑一色で、足には赤味がさしている。自分の体長より大きいくらいのクワガタ虫のような大きなカマを広げているのが奇妙なのだが、よく見ると長い前足だった。 図鑑で調べると、クモ…

ツクツクボウシの話(まとめ)

職場近くで、9月以降はセミの地位を独占していたツクツクボウシの声が、10月9日を最後に聞こえなくなった。今の職場はこの地方の内陸にあり、自宅は海に近いところにあるけれども、気候などの条件に大差はないだろう。自宅近くでは、ババウラ池で10月4日に聞…

カイツブリの秋の子育て(・・・)

仕事の帰りに車を停めてみると、ババウラ池の水の大半をなくなり、底に大きな水たまりのように残っているだけだ。どうやら底の栓をあけて一気に水抜きしてしまったようだ。 水たまりにカイツブリの親鳥はいない。おそらく水が無くなって生活できないレベルに…

新古今和歌集を読む

詩歌を読む読書会で、新古今和歌集の解説本を読む。全2千首の内、80首を解説した角川文庫のビギナーズクラシックのシリーズで、高校の先生が執筆しているためか、背景知識などの記事もわかりやすく、素人にはありがたい。 読書会はいつも通り、参加者各人が…

ランドマークの消滅

ひさしぶりにコガネ町の商店街を訪ねる。ほとんどの店がシャッターを下ろしていて、いよいよおじさんの口上どおりに「黄金市場もいよいよ危ない」事態になったかと思ったが、どうやら日曜日は市場全体のお休みの日らしい。しかし、この市場の(ごく近い)近…

カイツブリの秋の子育て(つづき)

ババウラ池の水はまたこころもち減っているようだ。しかし、一気に抜かれているわけではなさそうなのが救いではある。 夕方池をのぞくと、またしても意外なことが。親は一羽だけ。しかし小さな粒みたいに見えるヒナが、なんと二羽いるのだ。二羽とももう親の…

古事記を読む(上巻)

読書会で古事記の現代語訳を読んでいる。上巻を2回で読み終わった。せっかく読んだばかりなので、まずそのストーリ-の要所を自己流にメモしておこう。 天に神様が生まれる。彼らは、イザナギ・イザナミの男女の神を地に送り出して、国を作らせる。イザナミ…

我が街の斜面緑地と山当て

僕が住む住宅街は、小さな丘の里山を造成して作ったものだ。近ごろの造成技術は進んでいるようで、土地のでこぼこを巧みに埋めて無駄なく住宅地にしてしまうから、斜面が緑地で残されることは少ない。それでも寺社やため池のある斜面にはもともとの林が残さ…

斜面緑地のこと

国立市の市長の昔の講演録を読んでいたら、国立という街の当初の設計について、こんなことが書いてあった。 国立は駅前ロータリーから三本の大通りが放射状に伸びている。大学通りは大学のキャンパスを貫いて中心軸をつくり、冨士見通りは富士山が突き当りに…

『ここが変だよ地方議員』 小田りえ子 2015

民間企業から、政令市である川崎市の市会議員が一期目の在任中に出した本。トピックが見開き二ページにまとめられていて、その内容を解説する四コマ漫画と、女性の話し言葉による一行まとめがあるので、とても分かりやすい。 著者が民間企業在職中に地方自治…

『日本近代小説史 新装版』 安藤宏 2020

たぶん高校生の頃だったろうか、教科書の副読本みたいな扱いの文学史の解説書を愛読していた。息子の時代には、豪華なカラー版の国語便覧になっていたから、もうああいうものはないのかもしれない。10代には、そんな文学史をガイドに小説家たちに憧れ、作品…

カイツブリの秋の子育て

ゴミ屋敷みたいな無防備な浮巣でのカイツブリの抱卵は続いた。あいかわらず、親は一羽しか見当たらない。すると、ため池の水かさが少し減ってきたことに気づいた。浮巣は枯れ枝にくくりつけて流されないようにしているから、水面が大きく下がると持ち上がっ…

『学校が泣いている』 石井昌浩 2003

2000年前後の東京の国立市における公立学校の現状について、現役の教育長という立場からのレポート。この報告の30年くらい前に、「文教地区」国立で教育を受けたことをそれなりに誇りに思ってきた自分には、刊行当時読んで、ショッキングな内容だった。 初読…

「城ヶ島の落日」を読む

読書会の課題図書として北原白秋の詩集を読むとき、できればこれは文句なしという傑作を見つけたいと思った。朔太郎好きとしても、二人はほぼ同じ世代で師弟や兄弟のような交流のイメージがあるから、朔太郎に匹敵するような作品があるのではないかという期…