大井川通信

大井川あたりの事ども

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『建築をつくる者の心』 村野藤吾 なにわ塾叢書 1981

丹下一門の構想力の正史と、それを「どや建築」と捉える裏面史との二冊の本を読んだところで、今度は、彼らの先輩格にあたる筋金入りの建築家である村野藤吾(1891-1984)の本を読んでみる。4回にわたる市民講座で講師を務めた時の後述筆記がその内容だ。 …

BAND-MAIDに激ハマリする

ここ一週間ばかりは、仕事から帰ってきて、ずっとバンドメイドの動画を見続けている。メイド設定の5人組のガールズバンドだ。それで、他のことが一切できていない。たぶん現実逃避なのだろうけど、それだけではない気もする。 ネットの動画もふだんはほとん…

九太郎の誕生日

今日は、九太郎の満一歳の誕生日。 猫の誕生日がなぜわかるかというと、ブリーダーの店で生まれた猫だからだ。だから両親もわかっていて、父親のマイケルとも母親のつばきちゃんとも、何度か会っている。種類は、手足の短いマンチカンだ。 一年前までは猫を…

『非常識な建築業界』 森山高至 光文社新書 2016

先日読んだの『丹下健三』(豊川斎赫著)は、丹下健三とその弟子の有名建築家たちの構想力と作品を、戦後建築史として肯定的に描きだしたものだった。 今回の本は、いわばその裏面史ともいうべきもので、彼らの仕事を身もふたもなくぶった切るものとなってい…

優しい気持ちと車間距離

ロックミュージシャン佐野元春(1956-)の言葉。佐野元春は、独特のキャラクターのためにテレビのバラエティ番組に呼ばれることがある。久しぶりのテレビ出演で、自身の運転中のいら立ちを抑えるために自ら作った標語を披露したものの、あまりに平凡な内容…

窓から見えるもの

今の職場の机から目をあげると、窓ごしに松林の上の空を見ることができる。そこには、たいていトンビやカラスの姿があるが、時にはミサゴが飛ぶのが見える。 ミサゴは、英語名はオスプレイ。空中で自在に姿勢を変え、水中の魚をめざしてダイブする、あの勇敢…

『方舟さくら丸』 安部公房 1984

読書会の課題で読む。といっても小説を読む会ではなく、ふだん評論を読む読書会の方で、足掛け25年くらい関わっているが、小説は初めてかもしれない。難敵ぞろいの参加者だから、報告者ではないけれども、少し念入りに読んだ。読後の印象をメモしておこう。 …

仮面ライダーと昆虫図鑑

僕は小学生の頃、小学館の学習図鑑のお世話になった。当時、図鑑と言えば、蜜柑色の背表紙の小学館がメインで、70年代に入ってから、ようやく学習研究社の図鑑が巻き返しを図る状態だった。 確か手に入れた一冊目は、昆虫の図鑑で、ボロボロになるまで使った…

こんな夢をみた(リアルすぎる)

事務所で、10時半から、職員個人への書類の交付がある。事前準備をなまけて、いざ書類を調べてみたら、こちらで手書きで付け加えないといけない書類があることに気づいた。たいした手間ではないが、職員はもうぞろぞろ並んでいる。 手渡す上司も、すでにその…

百千鳥の季節

今年は暖冬で、二月半ばにようやくきた厳しい寒波もすぐにひいてしまった。暖かいので散歩していると、職場近くの松林で、不意に小鳥たちのさえずりに取り囲まれる。松の枝先の松葉に顔を突っ込んだり、垂直の幹に止まって、樹皮の割れをついばんだりする。…

角帽とミロク菩薩

正月があけて姉があそびに来てくれた時、僕の大学の角帽をもってきてくれた。実家のたんすの奥に大事そうにしまってあったのだという。 年末に、空き家になっていた実家を従兄に贈与する契約をした。今まで帰省した時に、目についた本や品物は持って帰ってい…

近ごろ売れている本について

『ケーキの切れない非行少年たち』が売れ続けているらしい。ベストセラーになる前に手に取って、このブログにも感想を書いたけれども、それほど良い本だと思わなかった。 もちろん専門家による大切な知見が得られる本だ。ただ、この本の売りである「ケーキの…

仏教書とビジネス書

仕事や日常生活で使う必要がなかったせいか、今に至るまで英語がまったくものになっていない。ときどき学習しなおすといっても、受験英語の焼き直しにすぎない。やさしい小説を読もうとしても、三日坊主で終わっていた。 それでしばらく前に、いい勉強法を思…

月さすや碁をうつ人のうしろ迄

詩歌を読む読書会で、岩波文庫の『子規句集』をあつかう。正岡子規が生涯に残した2万句の中から、高浜虚子が2300句ほどを選んだ句集だが、その大半にさっと目を通すことになった。もしかしたら、僕が今までに目にした俳句の総数よりも、多かったかもしれな…

『丹下健三』 豊川斎赫 岩波新書 2016

僕はもともと古建築が好きだったのだが、社会人になってからは、近代以降の建築もぼちぼち見るようになった。 古建築は、様式が主役だ。寺院や神社などの宗教建築が中心で、建物の用途も限られている。様式を覚えることで、いっそう興味をもっておもしろく見…

予言をめぐって(『第四間氷期』 安部公房 1959)

安部公房(1924-1993)の『第四間氷期』(1959)を読む。 題名から、勝手にスケールの大きくてスマートなSF活劇みたいなものを想像していたのだが、50年代の安部作品らしい、ねちっこい対話で構成された、不気味に歪んだイメージの話だった。 この小説で重要…

初暦五月の中に死ぬ日あり

正岡子規(1867-1892)の明治32年新年の句。 新しいカレンダーが手元に届く。パラパラとめくると、5月あたりに自分が死ぬ日があるような気がする、という句だろう。 病床の子規にとって、これは突飛な思い付きではなくて、かなり現実的で切実な実感だったの…

こんな夢をみた(季節風)

某地方で、季節風の吹き方に変化が現れているのだという。地図で確認すると、四国の瀬戸内海に面したあたりだ。その土地特有の、ある時期に一定期間強く吹く〇〇風が、今年はわずか一日で弱くなっている。 僕の勤務先の事務所から、僕を含め三人が出張するこ…

不動院金堂 広島県広島市(禅宗様建築ノート3)

広島の不動院金堂に訪れたのは、もう35年くらい前の話になる。内部の拝観をさせていただいたが、本尊への参拝もそこそこに天井やら柱やら内部架構ばかり見上げていたから、住職に急かされて、ちょっと気まずい思いをしたのを覚えている。 建築書の図版で見る…

絶対的に不正であること(本川小学校平和資料館)

原爆投下の目標になったといわれるT字形の相生橋を渡ると、すぐのところに本川小学校があった。路地に入ると、敷地の一角に、表面のコンクリートが傷んだ異様な建物が目につく。正門に回って、事務室を許可を得てから、その平和資料館に入った。 当時鉄筋コ…

ヒロシマノート

広島市内を、一日かけて一人で歩いた。新幹線の停車駅だから、何度も来ているような気になっていたが、実際に街を歩くのは、3回目かもしれない。それも駆け足で寄るといった程度で、一泊してじっくり見るのは初めてだった。 同じ九州ということもあって、長…

カウンセリングを受ける

機会があって、カウンセリングを受けてみた。特に大きな悩みや生きづらさを感じていたわけではなくて、偶然、そういう機会が舞い込んできたからだ。 日頃自分自身には、不思議だとか変だとか思うことが少なくはないのだが、なんとか自己解決してここまで生き…

柿本人麻呂の宇宙旅行

赤色巨星ベテルギウスの異変を知ってから、久しぶりに夜空の天体が気になっている。子どもの頃は天文ファンだったが、それ以降は、彗星が評判になった時くらいしか夜空を観察することもなかった。 大井の里山を開発した今の家に引っ越したばかりの時、まだ周…

五十音図の起源

『日本語をつかまえろ!』(飯間浩明 2019)から。 「いろはにほへと」の歌は古くからあるだろうと思っていたが、五十音図がそれと同じくらいの千年の歴史をもつものだとは知らなかった。せいぜい、明治以降に近代教育のために整備されたものだと漠然とイメ…

谷の読み方

『日本語をつかまえろ!』(飯間浩明 2019)から。 谷は、普通名詞として使う場合は、「たに」としか読まない。では、地名として使う場合はどうなのか。著者によると、関東や東日本では「や」と読むことが多く、関西や西日本では「たに」と読む地名が多いと…

身近なことばは4音になる

『日本語をつかまえろ!』(飯間浩明 2019)から。毎日小学生新聞の連載をまとめた本だから、ふつうの日本語論よりも、ずっと身近なやさしい話題が多い。 「あだ名」のトピックで、木村拓哉をキムタク、昔の事例として榎本健一をエノケンと呼ぶことを紹介す…

怒りのゆくえ(その2)

昨年、エコノミストの野口悠紀雄(1940-)の『戦後経済史』を読んで、いい本に出会えたと、とても感心した。偶然、山家さんと同じ1940年生まれ、名前も同じユキオである。野口さんの本の後半は、今回の山家さんの平成経済史と重なっている。その部分を読み…

怒りのゆくえ

というわけで、山家悠紀夫さんの『日本経済30年史』を読む。 80年代の前史から、バブル崩壊を経て、アベノミクスまで。僕自身が実際に生きた時代の経済の動きを、7つの期間に分けて、豊富な図表や経済指標をもとに簡潔に解説してくれて、わかりやすい。その…

『日本経済30年史』 山家悠紀夫 2019

20代の頃、東京で塾講師をしていたとき、地元の公民館で市議会議員が主宰する会合やイベントに参加する機会が何回かあった。主宰は革新系の無所属のベテラン女性議員で、当時気鋭のマルクス経済学者小倉利丸を講師に呼んだ集会などもあったと思う。 そのグル…