大井川通信

大井川あたりの事ども

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

論理的ということ(その4:回転読み)

前回の議論は、僕に、ある英語学習のメソッドを思い起こさせる。 それは、根石吉久という詩人・批評家の編み出した「回転読み」という語学学習法で、僕もすこしだけかじったことがある。たんなる音読ではなく、ある一文をマスターするために、文末と文頭をつ…

論理的ということ(その3:欧米と日本)

ここで話題はうんと卑近になる。 近ごろは、バンドメイドというガールズバンドの音楽を聴いて動画を見てばかりいることを前に書いた。動画の英文コメントを読み、外国のネットの掲示板を読むと、多く欧米のファンが書くコメントが、日本人がそういうところに…

論理的ということ(その2:学校と読書会)

近ごろでは、日本の学校現場でも、子どもたちが論理的に考えることを、かなり本気で取り組むようになってきたようだ。これからの学びは、主体的で、対話的であることが宣言されたりしている。 その前提になるのは、論理性ということだろう。自分の考えを筋道…

論理的ということ(その1: 論理的な人)

ふだんの生活で接しているなかで、この人のしゃべることは筋道だっていて、とても論理的だと思えることが、ごくたまにある。体験的に、そういう人はとても少ない。もちろん、専門分野で論理を駆使するのを仕事にしているような人は別だが、そういう人でも専…

『機械の図鑑』 小学館の学習図鑑シリーズ24 1962

以前から、少しずつ子どもの時の蔵書をネットで見つけては買い集めている。整理好きの両親の影響があって、それらはすべて処分してしまっていたからだ。 小学館の学習図鑑はなつかしい。僕は当時から、本を読むことより、本をながめることが好きだったのだと…

ロック勉強中

バンドメイドの動画を見つけてから、彼女らの動画を見、音楽を聞き、情報を仕入れることに自由時間の大半を費やす日々が、三か月に渡って続いている。 彼女たちの音楽を理解するためには、基本に立ち返って、本場のロックを聞きなおさないといけない。80年代…

山田饅頭の味

僕は、食欲とか味覚に関して弱点が多い人間なのだが、それを勝手に1960年代の貧しい日本のそれほど豊かでない家庭に育ったためと理由付けしている。 カービィ―のように、意地汚くなんでも吸い込んでしまう話をしたけれど、それと関連したことで、モノの美味…

『廣松渉 哲学小品集』 小林昌人編 1996

5月22日は広松さんの忌日だから、読みやすそうな短文集を手に取る。書き込みを見ると、2009年に再読しているから、およそ10年間隔で読んでいることになる。この本をもう一度手に取ることはあるだろうか。 柳川時代の住居あとを見ているから、やはりその頃の…

ベニカミキリと昆虫図鑑

新しい職場の裏の林を散歩していたら、きれいな赤色の甲虫が羽を広げて、ゆったりと飛んでいる。とまったところを見ると、細長い身体の小さなカミキリムシだった。 体長は15ミリ程度。前羽は鮮やかな赤で、前胸部には黒い斑点が五個ある。頭と手足と長い触覚…

はじめての夢

僕が幼いころに見た夢で、はっきりと覚えている場面がある。直接の記憶というよりも、こうして何度も思い出すことによって、現在まで記憶が受け渡されてきたものだろう。しかし、夢の記憶としては、まちがいなく一番古いものだ。 川をはさんで、向こう側に道…

夢の街角

夢をめぐる昨日の考察を使えば、夢にでてくる街角についての長年の疑問について、一歩理解をすすめることができるかもしれない。 僕のみる夢の舞台は、故郷の街であることが多い。昨年末に実家を処分して精神的に身軽になった分、もう故郷の夢はみないかと思…

このごろ夢ばかりみています

このごろ、立て続けに鮮明な夢をみている。しばらく、夢らしい夢をみなかった時期もあるし、みてもほとんど記憶に残らない夢ばかりのことが多かった。 なんとなく眠りの浅さと関係しているような気もする。眠りが浅く、夜中に起きがちだと、睡眠中の無意識の…

こんな夢をみた(隣家の訪問客)

家の玄関に入るときに見ると、道の先で家族らしきグループが立って、何かを待っているようだ。隣家に用があるのだろう。まだ明るかったが、家に入って薄暗くなっても、まだガヤガヤして待っている。 隣家の敷地の近くには、僕の家の勝手口が開いていて、通り…

カービィとおにぎり

僕が食い意地がはった人間であることは、何度か書いている。まだ日本が貧しかった60年代に、富裕とはいえない家庭に育った者の宿命と、自分勝手に解釈してあきらめているが、ポストモダンの飽食の時代に育った息子たちの食べ物へのライトな感覚には、あぜん…

演劇試作『玉乃井の秘密』注釈

3年前に勉強会「9月の会」で、小劇場の舞台の魅力を報告するために、自分なりにそのエッセンスを盛り込んで書いた台本が、この『玉乃井の秘密』だ。 台本の出来はともかく、演劇を考察するために、参加者に実際に演じてもらうというアイデアは、「読書会芸人…

演劇試作『玉乃井の秘密』(その2)

【場面3 玉乃井の地底500メートルの掘削現場 1944年】 ※三人はゆっくり顔を上げながら立ち上がって、はるか真上を見上げるしぐさをする。 B(鉱夫1):こりゃあ、ずいぶん深く掘ったものだなあ。C(鉱夫2):俺たち、旅館の隣の炭鉱の宿舎に押し込…

演劇試作『玉乃井の秘密』(その1)

★コロナ禍で、劇場やホールでの演劇やコンサートなどが中止に追い込まれている。僕が予約していた小劇場の舞台も取りやめになった。その中で、テレビ会議システムを使ったオンライン上の演劇などの実験も行われているようだ。 ★僕は、以前、少人数の勉強会で…

『貨幣とは何だろうか』 今村仁司 1994

5月5日は、恩師の今村先生の忌日なので、今年も著書を手に取った。 創刊されたちくま新書の第一号がこの本だった。同じ年に創刊された講談社選書メチエの一冊目も、今村先生の『近代性の構造』だった。当時の先生の論壇や出版界での評価がうかがわれる。 た…

こんな夢をみた(女優と大学)

僕は、自分の子どもらしき幼児と、古い商店街の一角にある空き地に、別の時代から「転送」されてきたようだった。そのまま僕は、建物の大きな部屋に入っていく。そこでは大掛かりな映画の撮影のようなことをやっていて、なぜか僕は新人女優として、その場に…

ゆあーん ゆよーん ゆあゆよん

父親は、中原中也が好きだった。本箱一つと決めていたらしい蔵書の入れ替わりは激しかったが、中原中也の詩集は、たいていそこにあったし、古本屋で処分してしばらく見なくなっても、また買い求めて復活したりしていた。 ある日、父親は古本屋に買い物に出た…

ごわーん ごわーん

我が家にやってきて一年が経った九太郎は、もうすっかり大人の猫になった。体重は3.3キログラム。すいぶんと小柄な猫だ。 昨年までは熱心にやっていたフミフミも、いつのまにか全くやらなくなった。敷布団の上で、一心不乱に両手で交互にシーツを踏みつけて…

不在の重さ

新型コロナウイルスで国が非常事態宣言を出してから、朝は次男を職場まで車で送るようにしている。4月から次男と職場がちょうど同じ方向になったこともあるし、やはり朝の通勤電車の方が混むというから、電車内での密集を妻も心配したためだ。 次男がすわる…

オアシス運動

大井川周辺を歩いていて、オアシス運動の標語がかかれた古い掲示板があるのが、以前から気になっていた。大井に一つ。村山田にも一つある。 オ 「おはようございます」 ア 「ありがとうございます」 シ 「失礼します」 ス 「すみません」 僕は今まで、こんな…

「自粛警察」で気づいたこと

コロナ禍で、自粛警察という人たちが発生しているそうだ。他県ナンバーの車や、営業している店に対して文句をいったり、公園に集まっている親子連れを警察に通報したりしているらしい。 少し前のことになるが、近所の知り合いの店でも、SNSに「店においでく…

『みだれ髪』 与謝野晶子 1901

詩歌を読む読書会の準備で、ほぼ400首にざっと目をとおした。見開き頁に対訳のある角川文庫を買ったが、そうでなかったらとても手に負えなかっただろう。開催当日の昼間に、コメダ珈琲にこもって高速でページをめくる。 いくつか気づいた点。 ・現代語訳では…

黒尊様考(用山信仰論・その4)

★黒尊様と平知(ひらとも)様という近隣の神様の記録と伝承を組み合わせることで、語られていない平知様の成り立ちを推理してみた。二年前のレポート作成時には、世界的なパンデミックが発生して、再び黒尊様にわずかでも注目が集まるとは思いもしなかった。…

黒尊様考(用山信仰論・その3)

★この調査で知った全国のクルソン信仰の聖地、とりわけ黒尊様と漢字も読みも同じである宮崎県の巨石はぜひ参拝したいと考えているが、実現していない。 【クルソン信仰】 実は、今では、黒尊様の本体は、この霊山から授かった何か実体のあるもの(像、お札等…

黒尊様考(用山信仰論・その2)

★前回紹介したように黒尊様を「くろずみさま」と読む文献もあるくらいで、すぐに黒住教を連想した。このレポート作成のあとにも、市内に古い教会を発見したり、岡山県倉敷にある黒住教本部を参拝する機会があったりしたが、おそらく無関係であるという結論は…

黒尊様考(用山信仰論・その1)

★パンデミックへの恐怖から、クロスミ様に出番をお願いした以上、その神格の正式な説明が必要だろう。2017年の8月に、それまでの調査を簡単にまとめている。その文章を、4回に分けて紹介したい。 ooigawa1212.hatenablog.com 【はじめに】 大井川周辺を歩き…

『ティファニーで朝食を』 トルーマン・カポーティ 1958

ゴールデンウイークだけど、新型コロナ禍で外出もままならないので、書棚から未読の小説を取り出して読む。村上春樹訳。有名な映画も見たことはない。 主人公は、まだ若い「僕」。それなりに楽しかったり不本意だったりする生活の中で、何人かの人たちと知り…