大井川通信

大井川あたりの事ども

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

勉強会3周年と転校生の話

友人の吉田さんと3年前の12月に始めた勉強会が丸三年を迎えた。コロナ禍の入院でやむなく開けなかった2回をのぞいては皆勤で、今回が35回目にあたる。 僕は例の通り、ブログから三本の記事をまとめて「馬と機関車」と題して話をする。吉田さんは、仕事がらみ…

高良留美子の詩

今年も多くの著名の人が亡くなった。記事にしたいと思いながら、書けなかった人も多い。つい先日、新聞で詩人の高良留美子(1932-2021)の訃報に接した。高良留美子は、大学時代、詩をよく読んでいたときに愛読していた詩人の一人だ。現代詩文庫の解説で岡…

手帳を使い切る

僕は学生時代から手帳を使い始めて、結局還暦の今年まで、年末に選んだ手帳を翌年一年間使うということを続けてきた。すべての手帳は保管されていると思う。 若いころはうまく使えず空白ばかりのことも多かった。仕事のことはカレンダーなど手元のメモですま…

『誰か故郷を想はざる』 寺山修司 1973

角川文庫版。表題作の初版は1968年に出版されている。 寺山修司(1935-1983)のエッセイを好んで読んだ時期があって、今回ベンヤミンの批評を読んでいるときに、不意に寺山修司を思い出した。それまでベンヤミンと寺山修司をつなげて考えたことなどなかった…

ノルアドレナリンとアセチルコリン

登録販売者の試験勉強では、人体の構造や働きの分野も出題範囲になる。あらためて、身体の内部については、これだけ身近なものであるにもかかわらずごく初歩的な知識すらないことを痛感する。人間にかかわること全般にはそれなりに知識や思索を積み重ねてき…

有馬記念とBAND-MAID

いよいよ有馬記念。といっても、たった一か月の競馬観戦歴しかないのだが。 初めてファンになったグランアレグリアが5歳牝馬だったので、同期の牝馬クロノジェネシスを応援する。一番人気は、3歳牡馬で日の出の勢いのエフフォーリアだが、自分がこの年齢にな…

クリスマスの大井川周辺

年末の休日で、寒い中大井川周辺を歩く。気分がのったら、クロスミ様かヒラトモ様にお参りしようと思いつつ。秀円寺の脇を降りていくと、お寺の境内の杉の切り株と、鎮守の杜の無残に切られた大木の幹が目に入って、気が滅入る。 近くで農作業しているご婦人…

冬の霊山

通勤の途中で景色が開けた時、県境に近い英彦山の特徴あるシルエットを遠望することができる。大きく盛り上がった山塊の左隣に岩山の突起が三つ並んでいて、一目見て異様な姿に目を奪われる。さすが古くから修験の山とされているだけのことはある。(ただし…

セミヤドリガ その4 -フィクションの試みとして

わたしは、夢の中で、少年の好奇心や幼い推理を楽しんでいた。少年の夏休みの自由研究というもの完成を応援したくなった。わたしはもちろん、ヒグラシやセミヤドリガといった生き物を実際に見たことはない。しかし、夢の中では、林の少し湿った空気や樹皮の…

セミヤドリガ その3 -フィクションの試みとして

そんなある日、僕は、あるヒグラシが、胴体によく目立つ大きな白い綿菓子のようなものをつけて飛んでいるのに気づいた。翌日には、同じような白い綿菓子をいくつもつけたまま、幹につかまっているヒグラシを見かけることができた。それは明らかに寄生虫に犯…

セミヤドリガ その2 -フィクションの試みとして

僕は、林の中を歩いていた。 そこは、ケヤキの植林だった。枝打ちされ、間引きされて、まっすぐに伸びた幹の間の空間は、比較的明るく、その斜面の山道を歩くのが、僕は好きだった。夏になると、僕の目当ては、植林のはずれにある雑木林で生まれるクワガタや…

セミヤドリガ その1 -フィクションの試みとして

わたしは、宇宙をさまよっていた。 わたしは宇宙船の上で生まれたのだと思う。気づいた時には、星々のきらめきの中を、わたしを乗せた宇宙船はどこまでもまっすぐに飛んでいた。ときたま、宇宙船は、光のない暗い天体の上に降りたった。すると船体は、ざらつ…

ある現代美術家のトークショーで考えたこと

【紙を切るということ】 阿部幸子さんは、自衛隊時代に精神の病を得て、療養中に紙を切り始めたという。 紙は無心に切るのではなく、醜いことを考えながらでないと切ることができないと言っている。以前は、死ねばいいのにとか思いながら切っていたというが…

友人の誕生日

若いころからの友達の誕生日にお祝いの電話をする。たまに連絡を取り合うくらいで、長い間会っていない。 彼女も還暦。すいぶんと明るい声なので、理由を聞くと、やはり子どもから手が離れたことが大きいという。教育方針で悩んでいた息子さんも、今年地元の…

キャベツ論 ― 齋藤秀三郎さんのキャベツに寄せて

キャベツをくるむ葉の一枚、一枚の、支脈と隆起がつくりだす無限の複雑さ。 キャベツの葉がくるむキャベツは、しかし、無数のキャベツの葉によって構成されているから、キャベツの実体とは、実は、当のキャベツがくるむキャベツの葉そのものである。 一枚一…

ついに『いやいやえん』を読む

子どもの頃、中川李枝子(1935-)の童話『かえるのエルタ』(1964)が好きだった。物語だけではなく、実妹の大村百合子(1941-)の描いた挿絵の子どもたちが何とも魅力的だった。 『かえるのエルタ』もまだ新刊書として版を重ねているけれども、この二人の…

生き返れ、マイル王!!

競馬関連の動画を見ていたら、たまたまこんな動画に出くわした。再生回数もわずかで、ファンが競馬場でレースを記録しただけの短いものだ。 ファンファーレが鳴ると、ああ緊張する、という撮影者の声が聞こえる。若くて人が好さそうな声だ。 先月に阪神競馬…

車をまたこする

4月に自宅の駐車場のブロック塀で車をこすってしまい、修理に出した。この家に住んでから20数年間、おそらく一万回以上駐車場で車を出し入れしてきて、入り口のブロック塀に車体をあてたことは一度もない。 おそらく、ハンドルを切るタイミングとかに、微妙…

特別な記念日に何を食べるか

還暦の誕生日は、本人にとってかなり特別な記念日だろう。 成人を意味する二十歳の誕生日は大きいし、それ以降10年ごとの区切りの誕生日にも意味はあるが、次に文化的、制度的に大きな区切りは、60歳の誕生日となる。一線からの引退とか、老人になるとかとい…

誕生日の資格試験

朝から試験会場の大学に行く。長男の通った大学だけれども、卒業後は足を向けてはいないから、懐かしい。会場に入ると、年齢層は思ったよりばらつきがあり、少し安心する。やや傾斜のある大教室で、まとめの小冊子に必死で目を通しているうちに開始時間とな…

試験前日

朝からコメダ珈琲に行って、2時間ひたすら過去問を解きまくる。本当はもっと早く過去問を解いておいて、試験前日は暗記事項の再チェックですませるべきだが、後手に回った。過去問で知識の総まとめを行い、まとめ用の冊子(既製品)に不足分を書き込んでいく…

アラっと修復、アラントイン

アラントインは医薬品に配合される組織修復成分。目薬や口内炎の薬などに入っている。この成分名と効用を覚えるためのごろ合わせが、「アラっと修復、アラントイン」だ。 医薬品の登録販売者の試験では、医薬品とその成分を覚えるのに苦労する。僕にはまった…

小津の誕生日

映画監督の小津安二郎(1903-1963)と僕は誕生日がいっしょだ。若いころ、蓮実重彦の本でそのことをおしえられた。相変わらず本気とも冗談ともつかない調子で蓮実が語るには、小津が特別に偉い人物である証拠は、還暦の誕生日にピタリと人生を閉じたところ…

中央と地方 -小川未明小論

以前、松本清張の推理小説を読んでいる時、犯行の動機やトリックの背後に中央と地方との距離や格差が、圧倒的な壁として存在していることに気づいた。高度成長期までの日本でそれは当たり前のものだったのだ。 小川未明(1882-1961)の童話を読んでみると、…

ナビと計画変更

ずっと使わなかったカーナビを、遠出の時に何回か使ってみた。なるほど便利だ。いまさらだが。機械の判断に従うのが嫌な気がしていたのだが、ナビの指示に従わずに走ると、ナビは冷静に経路を再計算、再判断して、その時点での最も「合理的な」経路を示して…

僕の資格試験勉強法(基本形)

まず、そのジャンルを網羅するテキストを「基本書」として選ぶ。これは何度も読み返す本だから、できるだけ読みやすく相性が合うものがいい。そしてとりあえず全体像を把握するために、ざっと読み飛ばす。 次に試験の「過去問」の問題集で使いやすそうなもの…

介護と教育

人は生まれてからしばらくの間は、その能力を右肩上がりに向上させるために他者の助力を必要とする。これが教育であり、その専門的な支援者が教育者だ。 その期間を過ぎれば一人前となり、自己の力で能力の維持とバージョンアップを図ることができる。しかし…

ハンガーの話

クリーニング店のビニールハンガーを再利用するものだから、ちょっと気を抜くと家にハンガーがあふれるようになり、定期的に処分しなければならない。よく見ると、木製ハンガーの中には、ずいぶんと古いものがある。そこには義母の名前がペンで書かれたもの…

カワウは70キロで飛ぶ

田んぼが広がる道を走っている時、すぐ横を首を伸ばして早く飛ぶ鳥が目についた。車で並走するのは、サギやトビが多い。スピードは50キロくらいだ。彼らはゆったりと飛ぶ。これは力強く早く飛ぶ水鳥の仲間だろう。 カモかと思って顔を見ると、真っ黒な身体だ…

試験にこだわる理由

実をいうと、退職をきっかけに転職する計画の予定が変更になってしまった。コロナ肺炎回復後の高揚した思いから、相手方に強引にお願いしていた無理が判明してしまったことと、研修などを通じて介護業界で職を得ていく厳しさを知ったことによる。 しかし、介…