大井川通信

大井川あたりの事ども

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

高松山で道に迷う

我が街の境界となる西の丘陵の最高峰「水落山」を征服したからには、その並びの高峰「高松山」にも登頂したくなる。雑草と有害生物の季節はもう目の前だ。週末に意地悪のように天気が崩れるが、なんとか晴れた土曜日に勇んで家を飛び出す。 高松山は200メー…

林を出でて林に入り

東京から遠い地方に生活の場所を移してしまったから、卒業した学校の同窓生に会う機会はほとんどない。全国区のマンモス大学の卒業生ですらめったに会わないのだから、ローカルな小中高の同窓生とは無縁なのだ。 地方では、大学というよりも、出身高校による…

空き地と土管

月に一度の吉田さんとの勉強会。今回で27回目だ。継続は力なり。友人と会うのに規則的な「勉強会」という枠組みが必要であるというのは、発達障害的な僕の気質によるものだが、そういうこだわりによって、怠け者の僕が継続して何かに取り組めるという利点も…

絵本「笠ぼとけさま」後書き

近所に「笠仏」という地名があるのが気になっていた。 ある時、その土地を歩いていると、道の脇に石材を無造作に寄せて地面をコンクリートで固めてある場所が目に留まった。庚申塔にしては扱いがぞんざいだなと思ってよく見ると、その中に、六角形の石材の六…

日本住宅政策三本柱

住宅の歴史に関する本を読んでいたら、戦後の住宅政策に三本柱というものがあるのを知った。敗戦による住宅不足を解消するために、1950年代の前半に相次いで打ち出された政策だ。 1950年(昭和25年)の住宅金融公庫法による、住宅ローンでの「公庫住宅」。19…

Hさんへの手紙

昨年11月にお会いしてから、いただいた資料の感想がすっかり遅くなってしまいました。言い訳になりますが、年末年始の長期休暇で書こうと予定していたところ、その期間完全に寝込んでしまい、正月明けもしばらく調子が戻りませんでした。年明けもバタバタし…

What と Way

マネジメントの教科書で、日本の組織は、部下への機会の与え方を支援の仕方において、弱点があるということを書いてあった。 肝心なのは、適切な課題(What)と同時に、それをいかにしてやるのか(Way)というコツを教えるということだった。そして、そのコ…

檸檬忌に梶井を読む

忌日には、一年に一回その人のことを振り返ることができるという効用がある。 というわけで、梶井基次郎(1901-1932)の89回目の忌日に、彼の本を手に取った。二年ばかり前、読書会で薄い短編集を読んだので、それに収録されていないものを選んで読む。 二…

水落山登山

近ごろ、ようやく低山登山の面白みを知った。雑草が茂ると山に入りづらくなる。暖かくなるとマムシとかも出てきそうだ。今のうちに登ろうと思うのだが、週末の度にいやがらせのように雨が降る。気ばかりあせるが、こればかりはしょうがない。 マイルールでは…

春の花

例年より開花がはやく、サクラが盛りを迎えようとしている。満開のサクラは淡く上品で、毒々しさはないけれども、やはり異様な生命力を感じる。先人がいろいろな想像力をかきたてられてきたのも無理はない。 職場近くの民家の庭では、早いうちから梅の花がき…

『百万ドルを取り返せ!』 ジェフリー・アーチャー 1976

読書会の課題図書。いわゆるエンタメ(娯楽)小説というのだろうか。読書会で扱うのは珍しい。いつもより楽に読めて楽しかったのだが、読書会を待たずに、読了とともに満足してしまった気がする。ハリウッドの娯楽映画を観終わった感じに近いだろうか。 スト…

小ネタが尽きると、あっという間に地域は衰退する

新聞連載の「折々のことば」に紹介されていた、玄田有史と荒木一男の言葉。「人口が減っても、地域は簡単になくならない。だが、」のあとに表題の言葉が続く。 鷲田清一の解説はこうだ。 「東大社会科学研究所で〈危機対応学〉プロジェクトを推進した二人は…

『日本の歴史的建造物』 光井渉 2021

面白かった。とても面白かった。すみからすみまで勉強になった。僕の読書は、どこか 勉強のために無理しているところがある。生来怠け者だから、読書や勉強が楽しいというわけではないのだ。ただし、(古)建築にかかわる良書だけは、純粋に楽しみとして手に…

りぼんちゃんの手術

りぼんちゃんが去勢手術をした。 お腹の毛をそっているから、傷口の回りは薄いピンクの肌が露出している。皮膚はすべすべで柔らかい。獣医さんが包帯を巻いてくれたが、すぐにずれてしまう。翌日には、傷を舐めないための襟巻(エリザベスカラー)を買ってき…

10年間日記をつけるとひとかどの人物になれる

英語の名言集みたいなものを読んでいたら、この言葉に出くわして、思わずにんまりした。原文は、Keeping a diary for ten years makes you somebody. 今年ちょうど10年連続日記の最終年をつけている。この言葉通りなら、そろそろ僕もひとかどの人物になって…

横超忌に『吉本隆明歳時記』を読む

今日で吉本隆明が亡くなって9年がたつ。調べると、吉本の忌日は横超忌というのだそうだ。手元にある一番薄い文庫本を取り出して読んでみる。 久しぶりに吉本の本を読みながら、ああ吉本節だと思いながら、この文体がいっそう遠く感じられた。きちんと理解し…

『社会的共通資本』 宇沢弘文 2000

柄谷の本で紹介されていたので、この著名な著者の本を手にとってみる。新書の体裁だけれども、経済学の大御所だから、とてもシンプルなテーゼを正攻法で論じていく。 繰り返されるテーゼは、言われてみればきわめてまっとうなものに思えるのだが、経済学や世…

菜の花の河川敷にて

ヒバリがあがる。またヒバリがあがる。河川敷のあちこちの草地の上で、ヒバリたちは縄張り争いで忙しい。広い畑地のようにはめくるめく上空にはあがらず、(縄張りを見失わないように)低い空でしばらく鳴くと、すぐに下りてきてしまう。 河川敷はいつのまに…

すた丼の呪い

スタミナ丼が、僕の唯一愛着のあるB級グルメでありながら、嫌な思い出に付きまとわれていることは以前に書いた。この呪いは、今も解けてはいないらしい。 一昨年、今の地元にすた丼のチェーン店ができたのだが、喜びいさんで食べに行っても、本場の東京の味…

『即効マネジメント』 海老原嗣生 2016

副題は「部下をコントロールする黄金原則」。ちくま新書の一冊だが、研修でのわかりやすいレジュメのようなマニュアル本になっている。 組織を活性化させて、要は儲けるようにするためには、メンバーのやる気(内発的動機)が必要だ。モチベーション向上のた…

夢野久作の忌日

今日は、東日本大震災から10年の日だけれども、最近、僕の高校の卒業式の日でもあったことを思い出した。学園紛争の「成果」でいろいろ自由だった高校で、人気投票で話をする教師が決まり、卒業生が立候補で勝手な話をするようなゆるい式だった。 また、今日…

ガチャガチャとガチャポン

ガチャガチャの新聞記事を読んで、子どもの頃のことを思い出した。初めて出会ったガチャガチャは、近所の商店の前に置いてあった10円のガチャガチャだった。10円だから、ビニール製の小さな車や人形や玩具など、たいしたものは出なかったと思う。それでも、…

ガチャガチャは出オチ

ガチャガチャの製作会社の人を取材した新聞記事にあった言葉。 だいぶ前からガチャガチャのブームが続いていて、地元のショッピングモールにも、ガチャガチャの販売機が100台以上並んだコーナーが設けられている。アニメなどの有名キャラクターを使ったもの…

『厄除け詩集』 井伏鱒二 1977

詩歌の読書会で読む。この課題図書を知らされた時、詩の専門家でない文士の詩集なんてと、やや期待外れに思う気持ちもあった。でもこの薄く難しいところのない詩集を実際に読んでみて、出会えてよかったと思えたし、今後愛読していくだろうと感じた。 自分の…

平井山に登る

平井山は、大規模なソーラーパネルの設置で、頂上部を崩されてしまった山だ。木々が切り払われて、造成があらかた終わった後で、調査後の古墳の石室の見学会で登ったことがあるだけだ。 その時は人の背丈よりもずっと高い石室の立派さに驚いて、これを壊して…

道路族と道草族

「道路族」という言葉があることを、新聞記事で知った。生活道路で遊んで大声を発したり、他人の敷地に入ったりするなどの行為をする子どもや大人を揶揄する言葉らしい。子どもの道での遊びや、大人の井戸端会議までが批判の対象になっているのを見て、ちょ…

『めぐり めぐる』 ジーニー・ベイカー 2021

原作は2016年の作品で、イギリス出身オーストラリア在住の絵本作家によるもの。コラージュの技法を得意としているらしく、透明感のある広々とした画面に自然や生き物の姿が生き生きと写し取られている。 主人公は、オオソリハシシギという渡り鳥。繁殖地のア…

僕の道くさ地図(その3)

僕の実家の地図と、今の自宅の地図。それぞれ家を中心にして、1キロ、2キロ、3キロの同心円を描いた二枚の「道くさ地図」を比較すると、いろいろなことが見えてくる。 半径1キロ圏内が、通常の徒歩圏内で日常的な生活圏だ。実家では、小中学校、JRの駅、公園…

僕の道くさ地図(その2)

実家の地図と、今の家の地図。この二つの二万五千分の一の地図をクリアファイルの表裏で比較すると、いろいろな面白いことに気づく。 意外だったのは、二つのまちが良く似ているということだった。東京郊外と九州の田舎という見た目の差異を超えて、地域の構…

僕の道くさ地図

子どもの道くさにかんする本を読んで、あらためて子どもと地域との濃密な関係について考えさせられた。本は、通学路に関する調査だ。それが単に通学のための手段ではなく、子どもにとって目的そのものといっていい体験の場所であることが描かれている。しか…