大井川通信

大井川あたりの事ども

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

酒造場跡の更地の前で

公園の前を曲ると、目の前に大きな空き地があった。どうやら酒造場が取り壊された跡の更地のようなのだが、一瞬土地鑑を失ってしまう。せいぜい老朽化したレンガ煙突を崩したくらいだろうと予想していたので、意外過ぎたのだ。 かなりボリュームのある建物で…

人はなぜ歩くのか

車の運転中、JRをまたぐ陸橋の車道の上からながめる景色に違和感をもった。陸橋の上からは、タグマの古い町並みが見渡せる。迷路のように入り組んでいるが、昔栄えた町らしく大きなお屋敷が並び、神社や小学校や造り酒屋があったりする。 その造り酒屋のレン…

タガメには勝てない

月例の吉田さんとの勉強会。今月の奇跡の大型ゲンゴロウとの出会いを受けて、今回は実物資料に基づいた報告をしようと、茶目っ気を出す。 まずは、自分で拾ったアオイガイの殻と、先日ネット販売で手に入れたタコブネの殻。それに両者のガチャガチャの海洋生…

「登録販売者試験」を申し込む

来年度から介護を仕事にするために、まずは「介護職員初任者研修」の受講を申し込んだ。10月から11月にかけて、土日を利用して13日間にわたる講座だ。一カ月半ほど土日が終日つぶれるのだから、意外と大変かもしれない。ただしこれは真面目に受講さえすれば…

『感じない男』 森岡正博 2005

新刊の当時、ほぼ読了して面白いと思っていた本を再読する。予想以上に引き込まれて一気に読めた。昨日の日本建築史の本もそうだったが、自分が本当に感心がある分野ですぐれた専門家が書いた本を読むことは楽しい。 自分の「中心軸」を探すために行う読書で…

『日本建築集中講義』 藤森照信・山口晃 2021 

建築学者と画家による、日本各地の有名建築の訪問記。もとは雑誌連載されたもので、両者の会話とともに、直筆のアンケートやマンガなどが載せられていて、素人にも読みやすく構成されている。 13の訪問先の内、実際に僕が見たことがあるのは、「法隆寺」「…

読書会の風景

コロナ肺炎のゴタゴタで3か月間休んでいた読書会に、久しぶりに参加する。こういう時は、オンライン開催での敷居の低さはありがたい。ただ間が空いたためか自分の発言は要領を得なくて、冗談も滑りがちだった。 一年以上ぶりに顔を合わせる年配のメンバーが…

『ねるじかん』 鈴木のりたけ 2018

近ごろ絵本をもっと読もうと思っている。残された時間の中で、何をやりたいのか、何ができるのか、を考えた場合に、絵本を読むことの優先順位が高くなることに気づいたのだ。 そこで、たまたま手にとった絵本を紹介する。リアルな絵柄で、特に主人公の男の子…

カイエビの泳ぎ方

コガタノゲンゴロウを目撃した田んぼで、ゲンゴロウの幼虫が、カイエビというものをエサとしているという話を書いた。 一センチにも満たない小さな生き物だが、妙に気になって引っかかる。自分がアオイガイ(カイダコ)とかタコブネとかが好きなことを思い出…

タコブネが流れて来た

海流に乗ってじゃありません。残念ながら、「ネットの情報と物流に乗って」ですが、うれしかった。 海浜沿いの職場に4年間勤めていた時、ビーチコーミングに夢中になった。その時手に入れたもので珍しく一番美しかったものは、アオイガイという名のタコのつ…

『苦海浄土』 石牟礼道子 1968(1972改稿)

読書会の課題図書で読む。いつかは読みたいと思っていたので、ありがたい機会だった。もっと告発一辺倒であったり、おどろおどろしかったりする作品だと思っていたが、想像していたより読みやすかった。聞き取りや記録など様々なタイプの文章をつないでいく…

火球を見た

夫婦で訪れたショッピングモールで勤め帰りの次男と待ち合わせて家に帰ろうとするときだった。立体駐車場から降りてすぐの路上。時刻は、午後8時10分を過ぎたあたり。進行方向の頭上に、明るい火の玉のようなものが斜めに走ったのがフロントガラス越しに見え…

『無痛文明論』 森岡正博 2003

コロナ肺炎の闘病中、痛みや苦しさを味わうことが、いろいろな要素をそぎ落としたあとの生きることの原形である、と思い至った。それを受け入れようと。 そのあと、自分の手元にあって読みかけていたこの本のことを思い出した。ちょうど読書会で森岡氏の新著…

『宅地崩壊』 釜井俊孝 2019

僕が住む住宅街は、小さな里山の一部を切り開いたものだが、僕が引っ越してきた当時はまだその大部分の造成が終わっていなかったから、坂の突き当りには高さ5メートルばかりの崖が続いており、また、区画の別の端まで行くと、そこからは深い谷になっていた。…

カイエビとホウネンエビ

コガタノゲンゴロウと運命的な出会いをした田んぼには、よく見るとたくさんのゲンゴロウの幼虫が泳いでいる。一センチあまりの色の薄いムカデみたいな形状で、頭部にはしっかりした大あごがあって肉食だ。 ただし、成虫の数ではヒメガムシの方が多いから、も…

こんな夢をみた(車を走らす)

仕事のためだろうか、実家近くの国立の市街地で車を走らせている。碁盤の目のように整然と区画された住宅街の道だ。突き当りを左に曲がれば、たまらん坂に出て、道なりに隣町の国分寺に出るだろう。そんなことを考えている。夢にしては、実際の街の配置や風…

大型種のゲンゴロウに出会う!

今から50年前の夏に、国立市谷保の田んぼで、小学生の僕は、体長一センチばかりの小さなゲンゴロウを採集するのに夢中だった。図鑑で見るような大きな黒光りするゲンゴロウは、公害問題の渦中にあった東京郊外ではすでに姿を消していたけれども。 今から16年…

『英語の構文150』 高梨健吉 1969

高校時代の英語の参考書といえば、美誠社の構文シリーズが懐かしい。授業の副読本に指定されたのは、1978年の改訂新版だったかもしれない。この本は、その後、新訂版、改訂版と引き継がれ、1999年まで30年に渡って発行されている。 2000年以降は、New Editon…

豪雨のお盆

僕の実家には、お盆という習慣はなかった。両親には多少行事ごとがあったかもしれないが、子どもたちにそれが共有されたりその意味が説明されたりすることがなかったのだと思う。 初詣の習慣もまったくなかったのと同じように、戦中派で戦前の神国日本による…

伊藤伝右衛門邸を見学する

職場の近くにある「炭鉱王」伊藤伝右衛門邸を見学する。以前、二回ほど見ていたが、久しぶりである。NHKの朝ドラで妻の柳原白蓮が取り上げられた時の賑わいは、もはやないようだ。酷暑の平日ということもあり、僕が広い邸内を見て回る間、他に来場者はなかっ…

ケヤキのシンボルツリー

『町を住みこなす』を読んで、住宅街の中に変化が生じ多様な要素が交じることが、そこでの暮らしを豊かにして、住宅街の寿命を伸ばしていくことを知った。均質な住宅街の高齢化という問題点を知りながら、今までそれの処方箋については考えたことがなかった…

『社会性の哲学』 今村仁司 2007

恩師の今村先生の主著を、ようやく読了。没後14年。何度も挑戦してきたが、読み通したのは今回が初めてだ。とんでもない不肖の自称弟子である。 先生が病に侵されながら最期の一年で書き上げた本で、後書きの日付は亡くなる一か月程前のものだ。出版は亡くな…

玄関の位置

僕の家は、緩やかな斜面に造成された住宅街の角地にあるから、隣家や道路との間に段差があって、低いフェンスで囲われているだけでも十分周囲から自立している印象だ。それだけでなく、ある時、立地上の特色に気づいて、それを得意に思っているところがあっ…

カブトムシの研究

大井の鎮守の杜である和歌神社は、とても不思議な場所だ。 短い参道の先には田んぼが広がっているが、周囲には住宅があって、社殿背後の森も里山の開発からわずかに取り残されているだけだ。しかしそこがかなりの傾斜地であり、人が立ち入りにくい場所で、広…

ナガイさんの息子さん

村チャコで、ナガイさんの息子さんと話をする。息子さんは、先年亡くなったお母さんの記録を残そうとして、いろいろ調べるうちに、僕の作った手作り絵本「大井始まった山伏」に興味を持ったそうだ。 お母さんは力丸家のおなごしさん(お手伝いさん)をやって…

宴会というもの

新型コロナウイルスの感染拡大で、昨年から職場関連の宴会の大部分が中止となっている。おそらく本年度いっぱい、この傾向は続くだろう。僕にとって定年前の二年間であり、本来であれば、宴会への出席が多かったはずで、むしろそれが重要な仕事みたいなポジ…

不器用さについて

自分のこれまでとこれからを考えていく上で、避けられないテーマは、自分の「不器用さ」ということだ。不器用なことが、いろいろネックになってきたというだけでなくて、これは自分の本質的なところに根差した特徴であるような気がする。 一朝一夕で直るもの…

『鮎川信夫詩集』 現代詩文庫 1968

久しぶりに詩を読む読書会に参加。 鮎川信夫は、荒地の有名詩人だが、若い時にそれほど熱心に読んではいなかったので、いい機会だと思って通読する。 ただ、結局、自分にとって特別に好きな一篇を見つけることができなかった。その特別な一篇を見つけられた…

35歳と生まれたて

『町を住みこなす』(大月敏雄 2017)をようやく読了。新書ながら充実の内容で、読みごたえがあった。 どんな家に住み、家とどんなふうにかかわるかは、生活の根幹の部分である。しかし、その部分は、自分の足元であるだけに、意識化されることのないブラッ…

岡庭昇さん追悼

評論家の岡庭昇さんの訃報をネットで見つけた。7月14日に亡くなって、21日に地元紙の新聞記事になっている。近ごろ新聞に目を通さなくなったので、気づくのが遅れてしまった。 大学時代に偶然手に取った岡庭さんの本を通じて、僕は思想や評論の世界に魅了さ…