大井川通信

大井川あたりの事ども

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

カラスと会話する(三日目)

今日は仕事が忙しく、昼休みは遅れた仕事を片付けたいところだ。ただ、明日から五日ほど職場にこないので、カラスに忘れられてしまうのではないかという不安もある。 それで意を決して公園のいつもの場所にやってきたのだが、今日は人が多い。遠くにいるカラ…

カラスと会話する(二日目)

翌日、同じ場所で待っていると、聞き覚えのあるクワッ、クワッの声が聞こえてくる。その鳴きまねをしてみると、昨日のカラスがまた近くの枝にやってきた。真っ黒でも、どことなく個性があるものだ。 カラスはいきなり、昨日とはまったく違う、普段聞いたこと…

カラスと会話する(一日目)

職場の前の都市公園を散歩しながら、調子よく光太郎や朔太郎の詩を吟じていると、すぐ目の前の枝にカラスが飛んできてとまった。三メートルくらい先の低い枝で、人なれしている都会のカラスでもふつうなら逃げ出すような距離だ。 はじめカラスが普通に鳴いた…

隣近所をどう体験するか

月一回の吉田さんとの勉強会では、お互いの成育歴について振り返りつつ自他の違いについて理解を深めることが多い。お互いががかなり違う環境で育ったので、この作業がとても面白く、有意義だ。 ただ、この話題の面白さと豊富さでは、僕は吉田さんの足元にも…

『民衆宗教と国家神道』 小澤浩 2004

山川出版社の日本史リブレットシリーズの一冊で、100ページくらいのブックレットだが、中身は濃い。大井川歩きの基本書の一つというべき良書で、今回は再読になる。 地元を歩くと、どうしても神社と民間信仰の問題にぶつかる。そうすると、国家神道の負の歴…

『八木重吉詩集』 郷原宏編 ( 旺文社文庫 1978)

十代の終わりの頃に買った詩集。親切な解説や注釈付きで近代詩人を読めるから、重宝していた旺文社文庫の一冊。還暦を過ぎた自分が、同じ詩集を手に取るなど想像もしていなかっただろう。 今日は、八木重吉の命日。この40年の間に何度か読み直しているはずだ…

『少女地獄』 夢野久作 1936

夢野久作ゆかりの土地を歩いたついでに、手持ちの角川文庫の短編集を一冊読んでみた。どれも面白い。読んで損をしたような感じがしない。ストーリーの奇抜さもあるのだろうが、それ以上に根底にある人間理解が広くて深いような気がする。このあたり、江戸川…

夢野久作の通勤路を歩く

夢野久作は、1919年から1926年まで、九州日報の新聞記者として働いている。本格的な作家活動を始める以前のことだが、唐原(とうのはる)の杉山農園から香椎駅までを毎日歩いて通っていたらしい。 僕は以前、唐原に住んでいたことがあったけれど、九産大前駅…

ヒラノで人に出会う

菊花賞の激走を見てから、大井川周辺を歩き始める。昨日のクロスミ様に続いて、今日はヒラトモ様にお参りしようと思うが、時刻も午後4時過ぎになってしまって、里山に入るのも怖い。薄暗くなりつつある山道を少し上ったが、この季節ジョロウグモの巣があち…

フィールドノートに通し番号をつける

大井川歩きを本格的に再開するにあたって、以前の聞き取りや調査の資料を整理する必要がある。というと大げさだが、手元には聞き取りなどのときに使った手帳といくらかの資料がたまっているだけだ。 僕は、整理能力も編集能力も、およそ様々な能力と気力に欠…

黒住教の教会にて

僕が初めに黒住教に関心をもったのは、地元の黒尊(くろすみ)様と関係があるかもしれないと考えたためだ。黒尊様がまつられた幕末の年代と、黒住教の布教の時期は一致するし、黒尊様が「中国地方」から勧請されたという情報と、岡山が立教の地である黒住教…

風邪をこじらせる

コロナ禍でマスクをし、手洗いやうがいをしているせいか、以前より風邪をひかなくなった。以前は、年に何回か風邪をひいていたような気がする。 記憶にあるのは、二年前の年末年始の休みの間中にひどい風邪をひいたくらいだが、今回、ひさしぶりにしつこい風…

能を少しだけ観る

職場のビルの一階ロビーで、能楽のミニ公演をするのにたまたま出くわした。演者は3名。三つの舞台のハイライト部分だけを、能面などつけずに演じて、最後の舞台だけ笛や鼓などの楽器が入った。実際の演者以外は「舞台」脇に控えて、独特の掛け声をかけて謡…

『江戸日本の転換点』 武井弘一 2015

この本も出版当時、大井川歩きに関連がありそうな本として購入していたもの。今になってようやく読んだが、想像以上に面白く役立つ本だった。大井川歩きの基本書の一冊として今後も読み込んでいく必要がありそうだ。 自宅周辺を歩いていて不思議に思うのが、…

『もうじきたべられるぼく』 はせがわゆうじ 2022

「どうぞのいす」でも、登場人物たちは、みな動物だった。絵本では、何の断り書きもなく、あたかも当然のように動物たちの視点で物語が始まることが多い。人間の生活が自然と切り離されるようになった現代でも、この傾向は変わらない。 一方、いうまでもない…

『ごろりん ごろん ころろろろ』 香山美子(文)・柿木幸造(絵) 1984

『どうぞのいす』の3年後に描かれた続編。登場人物たちも、みんなが集まる岡も同じだけれども、岡の上の木が切られて切り株になっている。これには何の説明もないけれども、その理由を推理するのは楽しい。 こんどは、ウサギがかなり大きな丸テーブルを作っ…

『どうぞのいす』 香山美子(文)・柿木幸造(絵) 1981

40年前の絵本だが、僕はすでに出版当時大学生だから、この絵本には縁がなかった。自分の子育てのときにも見た記憶はない。ただ、ずいぶん読み継がれてきたようで、昨年発行の手元の本が137刷となっている。 僕が初めて読んだのは一年前だが、なるほどよい…

こんな夢をみた(クジラの死)

ビルの部屋のような空間なのだが、屋内プールみたいに深く水がはってある。その中で自由に泳ぎ回る魚がいるのだが、よく見たら白いクジラだった。 僕が手ですくい上げると、クジラはまるでイルカのショーのように空中に躍り出て、そのまま水面に落ちた。全長…

「秋の祈」の覚え方

秋は喨喨(りょうりょう)と空に鳴り/空は水色、鳥が飛び/魂いななき/清浄の水こころに流れ/こころ眼をあけ/童子となる 多端紛雑の過去は眼の前に横はり/血脈をわれに送る/秋の日を浴びてわれは静かにありとある此(これ)を見る/地中の営みをみづか…

イタグレさんと出会う

職場近くの都市公園で昼休みの散歩をしていると、シュッとしたシルエットの高貴な感じの犬を散歩させている若い女性がいる。ピンと立った紐のように細い尻尾が印象的で、可愛らしい洋服を着せている。 思わず名前を聞くと、「イタグレです」という返事。思わ…

『黒住教経典抄』 黒住教教学局 1964

以前、仕事で倉敷に住んでいた長男を訪ねた時、たまたま近くに金光教と黒住教の本部があることを知って寄ってみたことがあった。そんなものには興味のない家族とは別れての単独行動だったが。そのとき、黒住教の本部で購入した本。 僕は大井川歩きの経験から…

マスマル橋のたもとですべてがつながる

昨日、大井川歩きの遠征で目覚ましい体験ができたので、今日も夕方、競馬の京都大賞典のレースをテレビで見てから、一時間ばかり地元の大井を歩く。 大井川のマスマル橋を渡ったところに、小さな坂があって、かつてサカ屋敷と呼ばれた民家の入り口になってい…

山頂から自宅をながめる

標高271メートルのコノミ山の山頂は、我が家から直線でぴったり3キロメートルの距離にある。視界の樹木が切り払われて、以前より眺望もよくなっているし、空気も澄んでいる。今回は肉眼での識別に挑戦して、なんとか家を目視することができた。 自宅の二階の…

コノミ山で学習する

久しぶりの聞き取りの成果と目当ての庚申塔の無事に気をよくして、バイパスを渡りずんずん前へと進んでいく。八並からの登山道で許斐(このみ)山に登り、王丸方面に下山するという大回りコースを、大胆にも選択する。 以前、この逆コースを歩いたことはある…

かっちぇワナの思い出

村山田に入って確かめると、電車から見えなかった庚申塔は、土手の陰のところにしっかり残っていた。電車や車の窓からの一瞥がいかにあてにならないかがわかった気がする。ただうれしかったのはそれだけではない。 鉄道の線路をくぐる小さなトンネルをでたあ…

「山荘」に住む人は?

久々に休日の早朝から、大井川歩きをする。方向さえ決まればおっくうな気持ちは消えるから、電車からだと撤去されたようにも見える庚申塔の現状確認をひとまずの目的にする。 まず街道沿いの平井を通って、目的地の村山田を目指す。平井では、笠仏様や元禄時…

石崎さん

仕事で福岡県の小郡市に行く。近頃は、出張でも車の運転がおっくうになって、公共交通機関を使うようになったから、駅から目的地までの道を歩くことになった。 街道付近の空き地に大きな石が二つ並んでいて、石のホコラもあり、白い説明板が立っている。それ…

崖っぷちのザリガニ

馬場浦池の水が抜かれた。 何年か前、カイツブリが夏過ぎで子育てを始めたとき、水抜きで小さくなる水面から飛び立てないヒナの姿にドキドキしたことがあった。四羽とも無事に脱出できた年もあったが、可憐な二羽のヒナを小さくなった水たまりに見失ってしま…

競馬の本

昨秋に馬と出会ってからは、競馬関係の本はずいぶん買った。まず「本」から入るタイプなのだ。より正確には「積読」から入るタイプだから、買った本は拾い読みしたくらいで、読み通したものはない。 もともと好きな寺山修司の競馬の本も古書で何冊かあさった…

ウマ尽くしの一日

早朝、宗像大社に出かけよう思ったけれど、午後にはいくつか予定もあり、片道4キロメートルの道のりを歩いていく気持ちの余裕がない。それで、新しい自転車が家に来たのを幸い、その試乗をすることにした。天気が良く、鳥と花と田んぼを堪能しながら、ペダ…