大井川通信

大井川あたりの事ども

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

定年後一か月

定年後、ようやく一か月経った。定年とはいっても、職場は古巣に戻り、ただ仕事内容と立場が全く変わる、ということで、ハードな転勤みたいなものだから、なかなか大変な一か月だった。 勤務時間が少し短くなり、職務上の責任が軽くなる、という点では楽だっ…

自分史という場所

今日は、吉田さんとの勉強会である「宮司の会」。前回僕が苦し紛れに取り上げた「ガチャガチャ」論が、吉田さんの琴線にはひっかかってくれたようで、「自販機」と「駄菓子屋」についてのレジュメをもらった。 吉田さんは映像の専門家であり、自分なりの映画…

「9月の会」をまとめる

吉田さんとの月例の勉強会の資料を作っている時、ふと、前身の「9月の会」の開催一覧表を完成させようと思った。50回までのリストが作ってあったので、それをあと7回分付け足して、レイアウトを整えA4一枚の表にして印刷しただけだが、それでも一つけじめを…

クレジットカード初体験

退職前にクレジットカードを作っておいた方がよい、というアドバイスに従って、自分の預金通帳を登録したカードを3月ギリギリになってつくって満足していた。そして、手元にたまっていた期限切れのクレジットカードの残骸みたいなものを、バッサバッサと処分…

「イエスの方舟」を聴く

職場の上司が、中洲にあるイエスの方舟の人たちのお店「シオンの娘」の常連だったことから、何度かそこに付き合わされたのは、もう10年以上前のことだ。その時は、同じ東京郊外出身の彼女らと、ローカルな情報で盛り上がった。イエスの方舟の教会がかつて国…

『当事者主権』 中西正司 上野千鶴子 2003

「全世界の当事者よ、連帯せよ」の言葉で締めくくられる、とても熱い本。障害者運動の中西と女性運動の上野という、経歴の異なった両者の思いと知恵が叩き込まれた共著だというのも、その熱さの由来だろう。 ただ、こうした本だからこそ、僕は自分の「当事者…

原田可菜人さんの新詩集

大井川の堤を歩いて原田さんを訪ねると、村の賢人は、座布団の上で昼寝をしている。納屋を改造したギャラリーは、風通しが良くて気持ちがよさそうだ。 四分冊で出すという原田さんの新しい詩集の一冊を購入して、さっそく目を通すと、その内容に驚いてしまっ…

『素数ゼミの謎』 吉村仁 2005

もともと薄い本だけれども、解説の漫画のページも多く、実質は100頁にも満たないのではないか。しかし、生物学者である著者の研究論文をベースにしているだけに、その内容は濃く、とてつもなく面白い。 このセミの存在やこの本のことはうすうす知っていたが…

『新版 フジタよ眠れ』 菊畑茂久馬 2021

読書会の課題図書。会の中では、僕は、著者の批評的な骨格が当時の日本の批評の成果を受け継ぐものであることと、著者の反国家主義がイデオロギーではなく九州での土着の生活に基づく体質的なものであること、等の発言をしたが、やや消化不良の感じだった。…

ようやくブログが追いついた

昨年の秋から遅れ勝ちだったブログが、ようやく実際の日付に追いつくことができた。この間は、資格試験の勉強や、定年前の雑事や動揺もあって、半月以上遅れることもあった。 何も連続更新にこだわる必要はない。僕の自己満足以外気にしている人などいないの…

いすゞ・ジェミニ ZZ ハンドリング バイ ロータス 1988

プレリュードにはあこがれていたけれども、購入したいという気持ちまではおきなかった。小型車で手に入れてみたいと思った唯一の車はいすゞのジェミニだった。 ジェミニ(二代目 1985-1990)は、当時、「街の遊撃手」というキャッチコピーで、パリの街並みを…

ホンダ・ビガー(2代目)1985-1989

ミニカー好きの少年も、大人になると自分の車を持つようになる。ただし、主として経済的な事情から、車に自分の好みや趣味を求めることはできず、自然と車への関心をうしなっていく。僕はお金のかかるものへの諦めはつくほうなのだ。 それでも一期一会の出会…

105番地

ふと昔覚えた数字がよみがえることがある。 105番地とは、僕の実家の古い住居表示だ。使われていたのは、僕が幼稚園生の頃か、もっと前までかもしれない。人間の煩悩の数といわれる108よりも少ないこの数字をみると、当時の地元の町にいかに民家がすくなかっ…

DIY的仕事

退職後の仕事は、団体の事務局を一人で担当する仕事だから、なにもかも自分でやらないといけない。今まで大きな組織に所属していたし、ポジションが上になることで、自分でやることの量はどんどん減っていった。 たまたまでしかないけれども、自分の地元で歩…

アストンマーティン DB5

たまにオモチャ屋さんをのぞくと、ついついミニカーのコーナーで足をとめてしまう。今回も何年振りかで、ミニカーを物色したのだが、珍しいアストンマーティンがあったので、迷わず勝ってしまった。 トミカは、通常のシリーズとは別に、恐らくは大人向けとし…

それぞれの再出発(子どもたち)

そんな妻のサポートを、昨秋家を出た長男が、何かと気を使ってやってくれている。先月買い換えたアンドロイドスマホが使えないという妻のために、安価でアイフォンを調達してくれたみたいだ。仕事や生活に余裕ができてきたのだろう。 5年前に特別支援学校を…

それぞれの再出発(妻の場合)

妻が乳がんの手術をしてから、今年で10年となる。先月末の検査で、がんセンターの主治医から卒業を言い渡されたそうだ。これからは、定期検査も地元の開業医で行うことになる。 手術後、気晴らしにビーズの教室に行ってアクセサリーを作るようになった。もと…

『夢のあもくん』 諸星大二郎 2022

諸星大二郎さんの新作短編集が届く。しかも二冊も。とちらも全て初見の作品ばかりだ。諸星ファンならば、それだけで満足するべきだろう。しかも『夢のあもくん』の方は、僕の好きな現代の日常を舞台にしたホラーだ。 「給水塔」という作品がよかった。近ごろ…

イソヒヨドリの送迎

7年ぶりに、駅まで歩くJRでの通勤となった。それだけでなく定年で、働く環境もだいぶ変わっている。環境の激変の中で、昔の仲間からのあたたかい声かけは何よりもうれしい。駅に通じる道沿いのビルから聞こえるイソヒヨドリの鳴き声もそうだ。 「停車場線」…

対訳『ディキンソン詩集』 アメリカ詩人選(3) 1998

今回の詩歌を読む読書会は、この岩波文庫が課題図書。僕は翻訳詩が苦手で、ほとんど読んだことがないし、たまに見たとしてもそこに「詩」を感じたことがない。 今回外国の詩が課題図書に決まり、困ったことだと思いながら読み出したら、意外にも面白かった。…

春競馬

昨年秋から、突然競馬に目覚めた人生を送っている。 昨年の秋までは全く何も知らなかった仕組みなのであるが、競馬にはG1と呼ばれる大会があって、年間行事として開催時期と開催場所が決まっているのだ。3月末からは毎週のように、日曜日の午後にG1の大会…

『ないしょのおともだち』 ビバリー・ドノフリオ(文) バーバラ・マクリントック(絵) 2009

「おんなのこ支持率NO.1 ときめき100%」と帯に大きく宣伝文句が書かれていて、ふつうだったら手に取ろうとは思えない絵本だったが、持ち込みOKの書店カフェの気安さで目を通してみると、どうしてどうして、これがとてもよい本だった。 思わずこの絵本を…

『超カンタン英語で仏教がよくわかる』 大來尚順 2016

扶桑社新書の一冊。著者は山口県のお寺に生まれた現役の僧侶で、アメリカでの研究歴をもつ。読みは「おおぎ しょうじゅん」 仏教のキーワードの英訳による解説と、仏教と日本に関する質問と答えの日英対訳、そして有名な三つのお経の漢語、英訳、現代語意訳…

同僚の逝去

4月6日は父親の命日だったが、その日に急遽、元同僚のお通夜に出ることになった。職場の知り合いの訃報に接したことは何度もある。上司や知り合い、仕事で多少関係のあった人たちだ。ただし、いっしょにチームを組んで何年も苦楽を共にした同僚の死に立ち会…

交渉の得意な女

ガス給湯器は現状でも、納期が3か月まちくらいらしい。実は少し前に知り合いの実家の給湯器が壊れて困っているという話を耳にしていたので、その覚悟はできていた。 ガス会社には代替機の用意もあるが、数に限りがあり、そちらも順番待ちの状態なのだという…

給湯器に祈る男

子育ての終わりごろは、経済的にかなり苦しかった。生活費やもろもろの必要経費、子どもの学費ですでに赤字になってしまうから、それ以外の不慮の出費にはなかなか対応できない。必要な家の補修(壁の塗り替えなど)も伸ばし伸ばしになっていた。 それでも冷…

『夜をあるく』 マリー・ドルエアン 2021

・原著は、2018年刊行のフランスの絵本。 闇と光の絵本。しかしその闇はおどろおどろしい暗黒ではなく、やわらかに広がるブルーだ。このブルーの闇が、全編の背景となっていて、そこにわずかに白い光が射し込んでいる。 計画通り深夜に目を覚ました家族4人が…

大井川桜紀行

桜が満開で、すでに散り始めている。空が荒れ渡っているので、近所の桜を見てあるくことにした。桜は、やはり青空に映える。 僕の住む住宅街の向かいの病院のある丘は、ぐるりと桜が植えられている。その先の交差点も、桜の街路樹が並んでいる。花見の時期に…

大井川歩きへの決意

新年度初めて大井を歩く。退職前のあわただしさで、ゆっくり歩く機会もなかったのだ。十日ばかりまえに打撲した太ももはまだ痛いし、曇り空の天候も今一つだが、生活が一新したため新鮮な気分だ。 ムラの賢人原田さんの納屋改めギャラリーによると、新しく出…

『しあわせなときの地図』 フラン・ヌニョ(文) スザンナ・セレイ(絵) 2020

戦争の映像で、古い町の建物や橋が破壊される場面があると、人命が失われたかどうかとは別に、その破壊行為自体をたまらなく嫌に思うようになった。 自分が歳を重ねたせいか、その古い建物を作るためにどれだけの人間の地味な仕事の積み重ねが必要だったかが…