大井川通信

大井川あたりの事ども

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『哲学入門一歩前』 廣松渉 1988

今年の廣松さんの忌日(5月22日)には、この本を手に取る。巻末のメモだと、出版年とその翌年に読んで以来の33年ぶりの読了となる。しかし若いころに読んだ本のためか、その内容はよく頭に残っていた。 廣松さんの四肢的構造論の骨組みは、説明する漢語は難…

『手品と奇術の遊び方』 大野萬平 1973

永岡書店の実用百科シリーズの一冊。 古書店を見ていたら、店外に置かれてる棚の本のなかに見覚えのある背表紙のこの本を見つけた。手に取ってみると、装丁も挿絵も記事もみな懐かしい。僕が小学6年生の時の出版だから、まちがいなく手品のマイブームのさな…

こんな夢をみた(観覧車と大竜巻)

夢は、いくつかのエピソードの羅列というのが真相に近いだろう。目覚めた瞬間に、直近のいくつかのエピソードを思い出して、それに無理にストーリーをつけようとする。多少無理があっても、偶然ストーリーとして筋が通ったときに、夢としてはっきり印象付け…

ホトトギスの初音

5月26日の早朝、ようやく今年初めてのホトトギスを聞いた。遠くから、ホッケッキョキョの繰り返しが小さく耳にとどく。その翌日の夕方も庭でホトトギスを聞く。 気になったので、この10年ばかりのホトトギスの初音の記録をざっとまとめてみる。ノートをひっ…

カラスの攻撃(続き)

翌朝、同じところを通ると、野原のさきで相変わらずカラスがしゃがみこんでいる。芝生の養生のために立入禁止のロープが張られている場所なので、とりあえず人は近づけない。同僚に昨日の武勇伝を話すと、さっそく見に行って、報告してくれた。 二羽のカラス…

小型黄金蜘蛛の隠れ帯

僕の家は、以前レッドロビンの垣根で囲われていたが、管理も悪いこともあって伸び放題の上、虫がついてかなり枯れてしまったので、3年ほど前、擬木のフェンスに替えた。そこだけは少し贅沢をして、擬木の板のうち一段をアルミの鋳造品を入れたのが我が家の自…

カラスの攻撃

仕事の帰り、都市公園の出口あたりを歩いていると、すぐ近くの茂みでカラスがうずくまっている。少し近づいてみるが、どこかケガしているのか遠くまで飛ぶことができない。心配してみていると、近くの低い電線に数羽のカラスが集まってきて、ガアガアと激し…

コロナ感染から一年/入院患者に手を振る

あの激動の一か月から一年が経った。この「事件」のためにたくさんのことを考えたし、これをきっかけに自分で動いたことも多かった。 初心を忘れないために、死線をさまよい治療に苦しんだ病院を訪ねてみる。リハビリの歩行訓練の途中にいつも窓から見下ろし…

アーケード街でライブを聴く

あらためて自他の身体を軸に据えて、いろいろ考えたり生活したりしようと思っている。自分の身体を新しい環境にさらしたり、他者の身体とかかわらせたりすることに意識的であろうと試みている。新しい身体経験を通じて発見したことを言葉にして、自分の言葉…

擬態を考える

昆虫の擬態について考えると、訳が分からなくなって、途方に暮れてしまう。しかし、今回は「カレハガ」が見事な擬態を見せてくれたのだから、そのことを考えずにはいられない。僕が考えられる範囲のことをメモしてみよう。 たとえば、僕の好きな蛾のオオスカ…

カレハガの擬態

僕の家の駐車スペースは、家屋の北側にあって、隣家の敷地(一メートル以上高い)との間に挟まれているから、少し湿っぽい。だから時々、珍しい昆虫がやってくる。 車の乗り降りの際に、家の壁板に枯れ葉が引っかかっているのに気づいた。次の乗り降りの時に…

コロナ禍の風景(観光地編)

コロナ禍も3年目に入って、やや終息の兆しを見せている。ちょうど一年前に、家族3人で感染して、僕自身重症一歩手前までいっているからその恐さはよく知っているけれども、なんとなく人間とその社会がウイルスとの共生のプロセスに入ったような気もする。外…

『吾輩は猫である』を読み通す

読書会の課題図書。 高校三年の受験勉強の息抜きで、なぜかそれだけ手元にあったポプラ社版少年少女文学全集の『吾輩は猫である』(上巻)を繰り返し読んで、笑いのセンスを磨いた。その後何度か全編読み通そうとするも挫折。今回読了して、やはり小ネタの面…

日向ぼっこの二人

やや古い話だけれども、ゴールデンウィークに長男が戻ってきて、思ったより長く家に泊まった。元の長男の部屋を次男の部屋にしてしまったので、もう自分に戻る場所はない、なんて文句を言いながら、次男の部屋に布団を敷いて仲良く並んで寝ていた。 一昨年の…

銅像ぐるぐる

僕の実家の近所には一橋大学があって、今のように校舎が整備される前だったから敷地に余裕があり、公園兼野原兼林の子どもには絶好の遊び場だった。 国立大学の伝統校だから、キャンパスのあちこちに、功労者の銅像がある。林の奥には高い石の台座の上に立つ…

寺山修司の三首

詩歌を読む読書会では、課題図書の中から三作品を選び、順番にそれを披露していくことになる。他の参加者も、それについてコメントを求められるから、参加が5人でも、合計15作品について、すべて自分なりの批評を加えることになる。これにはかなり鍛えられる…

カミソリの下

詩歌を読む読書会で、寺山修司の歌集をあつかう。昨年末ベンヤミンからの連想で寺山修司のエッセイを読み返してみたり、競馬のマイブームにより寺山の競馬論に手を出したりしていたところだったので、ベストのタイミングだった。 まずは、ずいぶん昔からもっ…

働く老人

JRでの通勤は、8年ぶりくらいとなる。その時は一年だけだったから、その前というともう十数年前のことになる。10年ひと昔とは言うが、今の時代はさらに時のスピードが加速しているだろう。 通勤の電車内の風景で、明らかに変わったと思える点がある。通勤…

『おなおしやのミケおばあちゃん』 尾崎玄一郎・尾崎由紀奈 2022

先日の勉強会で吉田さんが次回は駄菓子屋論をやると予告してくれた。うれしいのだが、振り返ると東京の新興住宅街に育った僕には実はちゃんとした駄菓子屋体験がない。学校近くの二軒の小さな文具店は、食べ物やオモチャも扱っていて駄菓子屋風ではあったが…

消防用水のゲンゴロウ

休日の夕方、ほとんど期待もなく、大井を歩く。もう暗くなるし、単眼鏡をもってはいても、鳥を見る機会もないだろう。マスマルの集落をぐるっと回っているときだ。 道路わきには、消防用水のための小さな池があって、汚い水がたまっている。周囲は鉄条網で囲…

こんな夢をみた(ビッグビジネス)

たぶん中国の大きな会社のワンフロアなのだと思う。薄暗い部屋に、ソファーがいくつも並んでいる。僕は相棒と一緒に、大きなビジネスの交渉に来ていた。相手の中国人の長老とは、話はほぼまとまりかけていた。 長老は、紙に何かを書いている。三つの〇を周囲…

ご注文ありがとにゃん!

休日、早朝からのファミレスで読書を楽しむ。ここは注文がタブレットだから、さらに気楽だ。ドリンクを飲んでいると、どこからか不可思議な音楽が近づいてくる。顔をあげると、目の前にフラフラと配膳用のロボットが現れた。 まったく予想もしていない事態だ…

4つに絞る

昨年あたりから、ようやく自分なりの生活の地図を描くことができるようになった。昔から読書や考え事のときに図を使って考えることはしてきたが、それを自分の生活の指針とするまでには至らなかったのだ。 直接のきっかけは、定年による生活の変化とコロナ感…

影絵の村

夕方近くなってから大井川周辺を歩く。 ムラの賢人の納屋兼ギャラリーを訪ねても不在。二冊目の新詩集が出来上がっていたので、代金を置いて一冊もらう。薄暗くなった庭に何か黒いものがひそんで、こちらを見ている。見つめ返すと、草むらに消えていった。タ…

『群衆 ー モンスターの誕生』 今村仁司 1996

5月5日は今村先生の忌日なので、今年も一冊取り出して読む。僕が大学で先生に出会った80年代初め頃は、先生はまだ数冊の著書をもつだけの新進気鋭の学者だったが、その後、ある思潮を代表する思想家として多くの著書や翻訳書を出版し、またそこにとどまら…

踏み切ってジャンプウー!

毎週競馬の大きな大会(GI)が続いていて楽しい。ただ、やはり知らない馬ばかりだと面白くない。一度でもレースを見た馬や、名馬の評判の高い馬が出てくると見入ってしまう。下済みで苦労した馬や騎手が勝つシーンもあり、そうした物語が背景にあるといっそ…

当事者運動黎明期の一風景

『当事者主権』を読みながら気になったことがある。どんなささやかな体験でも歴史の断片に触れていないことはないだろう。今回、僕自身のかかわりを、昔の手帳とノートを取り出して調べてみたので、また記憶が雲散霧消する前にメモしておこう。 大学3年の終…

流星号とマッハ号

ミニカーの整理をしていたら、実車のミニカー以外に、アニメのヒーローが乗る車のミニカーが二台あった。もちろん当時のものではなく、比較的最近作られたものだろうが、もっていることをすっかり忘れていた。 「スーパージェッター」は、1965年の1月から一…

キラキラとシワシワ

キラキラネーム(の問題点)については、世間でもかなり認知されているだろう。少し前に近ごろの子どもたちの名簿を見た時に、読めない名前の多さに驚いてしまった。純然たるキラキラネームではなくとも、名前のキラキラ化はすすんでいるようだ。 最近、シワ…

夜の音

夜中、目を覚まして、ブログを書いていると、ふと窓の向うから、ゴオーっという大きな音が聞こえてくる。花火が長く続くような爆発音にも聞こえるし、列車が通過するような轟音にも聞こえる。それが長く続き、起き出して窓を開けても、闇の向うでその音はし…