大井川通信

大井川あたりの事ども

子どもの本

『みどりの船』 クエンティン・ブレイク 1998

いつものブックカフェで偶然手に取った絵本。あまり良かったので、次に立ち寄ったときには買ってしまった。 美点はいくつもある。大判で水彩の絵がとてもいい。森の緑の描写。主人公である船は、見開きをたっぷり使って堂々と描かれる。一見船に見えるが、船…

『なまえのないねこ』竹下文子(文)・野田尚子(絵) 2019

猫を飼うようになってからは、猫を主人公にした絵本がどうしても気になってしまう。 しかし、そもそも絵本にはなんでこんなにも動物たちが多くでてくるのだろう。猫や犬については、ペットとして家族目線でふだん見ているからわからないでもないが、登場する…

『100万回生きたねこ』 佐野洋子 1977

カフェで絵本を読む計画について書いたが、さっそくあれこれ読み出している。名前を知っているだけの話題作にも気軽に手を出すことができた。たとえば『えんとつの町のプぺル』。ストーリーは古典的でやや平凡だが、絵の存在感はさすが。 『100万回生きたね…

絵本を読む方法

昔からファミレスで本を読んだり勉強したりするのが好きだったが、近年ますますそうなっている。家ではリビングでも自室でもすぐ横になって寝てしまい、本も読めなければ、まして勉強なんてできないのだ。 ジョイフルが御用達だったが、緊急事態宣言期間中は…

押し入れの中

図書館で新しめの絵本を何冊か借りてくる。 『おしいれのぼうけん』(古田足日他 1974)は名作の誉れ高いが、僕が中学生の頃の作品なので、リアルタイムに出会ってはいない。今年の3月で246刷。図書館でも何度目かの買い直しかもしれない。 いたずらをして、…

『ワニくんのレインコート』 みやざきひろかず 1989 

【オンラインビブリオバトル プレゼン原稿】 皆さん、お元気ですか。僕は、運悪く一か月近く入院していて、先週ようやく退院したばかりのところです。一時は、相当悪くなって、半ばもうふだんの生活には戻れないという覚悟をしたくらいでした。ただ病気をし…

『せっけん ぷくぷく』大園由美子(文)/浜田洋子(絵)

福音館書店の月間予約絵本「こどものとも0.1.2.」の1998年2月発行の絵本。次男の生まれる前の年だから、20年以上も前の本になる。 小さな男の子がお風呂場の洗面器で、せっけんを泡立てて遊んでいる様子を描いている。シャボン玉にしたり、船やイルカのオモ…

『ノラネコの研究』伊澤雅子(文)・平出衛(絵) 1991

研究書のようなタイトルだが、福音館の全40ページの絵本だ。 著者が追いかけた野良猫のナオスケの一日の振舞いを絵本にしている。追いかけた、といっても一日の移動距離はせいぜい1キロメートル余り。睡眠時間は18時間以上で、休んだ場所が4か所。ご飯を食…

『かえるのエルタ』 中川李枝子 1964

僕が子どもの頃に持っていて、繰り返し読んで、おそらく今でも書店に並んでいる名作童話。カエルの話なので、何十年ぶりかで読み直してみる。 どうしてこの話が好きだったか、あらためてよくわかった。物語の不思議さと面白さ、言葉の魅力が詰まっている。 …

『ノンちゃん 雲に乗る』 石井桃子 1967

子どもの頃と同じ装丁で、今でも書店に並んでいる懐かしい本。これは姉の本だったから、当時僕は読んではいない。聞けば、良い本だから、と父が姉にプレゼントしたらしい。そんな父の想いを想像しながら、読んでみた。 戦前(昭和10年前後か)の東京郊外に住…

『山のトムさん』 石井桃子 1957

僕は子どもの頃、1968年に福音館書店で再刊された本を持っていた。今手元にあるのは、自分の子育ての時に書店で見つけて買っておいたものだ。猫を飼ってみて、あらためて読み返してみた。 やはり、これは猫を飼わないとわからない本だと思った。子どもの時に…

『ここが家だ』 ベン・シャーン/アーサー・ビナード 2006

若い知り合いがやっている小さな本屋さんで購入。第五福竜丸事件を扱っているけれど、単なる告発や正義の主張に終わっていない。ベン・シャーンの連作を含めて、いろいろな方向へむかうベクトルを小さな絵本という形に押し込んでいる。そんな力に満ちた本だ…

『だるまちゃんとかまどんちゃん』 加古里子 2018

加古里子(1926-)が50年にわたって書き継いでいるだるまちゃんシリーズの最新作3冊の内の一つ。僕自身の幼児期にはまだ書かれていなかったが、息子たち二人はまちがいなくお世話になった。 だるまちゃんの不思議な友達は、火の守り神「かまど神」をモチ…

『消えた2ページ』寺村輝夫・中村宏(絵)1970

小学生時代に学校の図書室で読んだ物語。劣等生の友太は、妹に読んであげた童話「逃げだせ王さま」から抜けていた2ページを探すうちに、その童話の世界に迷い込んでしまう。町はずれの横穴や夜の電車が、異界への入り口となる展開は巧みだ。そこでは、わが…