大井川通信

大井川あたりの事ども

大井炭鉱

家から歩いて10分ばかりの里山の中に、小規模な炭鉱跡があることは、10年近く以前の聞き取りで知っていた。谷に沿って山に入ると、今は小さな畑地になっているが、周囲にはボタが落ちていたり、赤水がたまっていたりして、かろうじてその痕跡をうかがうことができる。しかし、昔から知る人がいうように、すっかり当時の姿を消してしまっているようだった。

それが、ネットで久しぶりに炭鉱好きの人のブログを開いてみたら、次々と新しい坑口などの遺構を見つけていて、そのコツまでが書いてある。モデルや先達が存在する力は大きいもので、地元の小ヤマをもっと徹底して調べようという気にさせてくれた。

谷にそってさらに数十メートル斜面を上がったところの藪の陰に、ひっそりと坑口は姿を隠していた。幅は2メートル程度、奥には台形に組んだ枠も残っていて、傾斜して地中に向かっているが、底は土砂でふさがれて水が溜まっている。

閉山から60年。創業は10年に満たず、数十人の炭鉱夫が働くだけの規模だったようだが、まぎれもなくこの土地に奥深く刻み付けられた歴史である。坑口は、今開かれたばかりのように生々しかった。