大井川通信

大井川あたりの事ども

江戸の元号

江戸時代の元号は36個ある。

以前から順番に暗記しようと思っていて、近ごろようやく覚え始めた。それと同時に、これも前から構想していた、大井川歩きの中で江戸の元号のコンプリートを目指す、という新しい遊びを始めることにした。いわば、路傍の元号を使ったビンゴゲームである。

大井川歩きの自主ルールは、自宅から往復歩ける範囲のこと(だけ)を調べる、というシンプルなものだ。そうすると、足を伸ばせるのは、自宅からせいぜい半径3、4キロの同心円内となる。鳥や石碑を観察したり、地元の方から昔話を聞いたりしながら、時に里山も上り下りするから、体力を尺度にするとそのくらいが限度となる。

今までのメモや写真を見返せば、ほぼ見当はつくのだが、それでは面白くないので、記憶と勘を頼りに一から探索を開始する。

一日目は、早朝から3時間歩いて、「元禄」と「宝永」の庚申塔、「天保」の常夜燈、「文化」の鳥居、「文久」の石祠を発見する。二日目は、「享保」と「文政」と「慶応」の庚申塔、「嘉永」の常夜燈を見つけるが、同じ元号の物件が増えるので発見は難しくなるし、そもそも元禄より前の17世紀の元号は見た記憶はない。

それでも、見慣れた石の神々に、もう一度ワクワクしながら会いに行けるのは、我ながらよい思いつきだと思っている。彼らのもつ歴史の奥行の違いに敏感になる意味でも。

ちょうどお盆で、探索の途中、前にお話を伺った一人暮らしのお年寄りの家に、新しい車が二台並んでいるのを見て、ちょっと温かい気持ちになれた。