大井川通信

大井川あたりの事ども

ため池のカイツブリ(その2)

久しぶりの大雨で、水抜きされたため池の底の水たまりも、倍くらいの大きさに広がって安心した。しかし二日もすると、もとの大きさに戻ってしまう。さらには、小さいながらも楽しい我が家というふうに水たまりの真ん中に浮かんで、エサ取りの潜水をくりかえしていた4羽のヒナも、水際の泥の中にへたり込む姿を見せるようになった。

カンカン照りのなか日陰もなく、水温の上昇や、オタマジャクシやザリガニの死骸による水質の悪化があるのかもしれない。翌朝には、とうとうヒナの数が2羽に減っていた。実は、ヒナは70日で飛べるようになるという記事を見つけていて、それならもう大丈夫だからと静観する言い訳にしていたのだが、水から上がっているところをカラスにでもさらわれたと考えるほかはなかった。

心配になって仕事終わりにのぞきに行くと、夕闇の中で残った2羽のヒナが、水際の土に並んですくっと立っている。おやっと思う間もなく、羽をばたつかせながら、水面を勢い良く駆け出した。大人のカイツブリが飛び立つときと同じ助走の練習を、水たまりの向こう岸に向けて、何度か繰り返していたのだ。

今朝姿を消した2羽は、きっと新しいため池や川を目指して飛び立ったのだろう。残された兄妹も、きっと後につづくはずだ。想像よりはるかにたくましい彼らの姿に、すっかり見とれてしまって、しばらく立ち去ることができなかった。