大井川通信

大井川あたりの事ども

元号ビンゴ(その3)

近所の小さな公園の隅に、古い石の祠があるのは前から気づいていた。鍵付きの金網のフェンスで囲われて、大切にされてはいるのだろうが、味気ない気もする。元号ビンゴの精神で目を凝らすと、ボロボロの石壁に文久三年の文字が浮かび上がる。新しい元号ではなかったが、身近な遺物の由来が知れてうれしかった。

この日は、期待したタグマ区の氏神では成果がなく、その先のイナモト区の氏神まで足を伸ばした。急な石段の上に元禄建立の社殿が残り、中世の経筒が出土されている由緒ある神社だ。社殿の裏の崖をさっと駆け上がる茶色の生き物が目につく。尾が胴体ほど長いから、チョウセンイタチだろう。ここでは、「安永」の常夜燈、「天明」の手水鉢、「元治」の鳥居をゲットする。

また別の日に、記憶を頼りに、クバラ区の集落まで出向き、地名の由来の古い清水の脇に「宝暦」の庚申塔を見つけた。

これで、18世紀半ばの宝暦から幕末までの100年(16個の元号)で、残す元号は「万延」のみとなった。しかし万延は、幕末とはいえ実質1年にも満たない期間だ。難敵を残し、闘志が湧く。