大井川通信

大井川あたりの事ども

二人の教師

最近、続けて二人の先生と話をする機会を持った。

一人は、もう40代のベテランだが、とても若々しい。もともと同和教育で鍛えられた先生だが、研究機関での1年間の研修のあとは、その成果を地元に還元しようと自分で勉強会を作って、若手に学びの機会を提供している。そのことは前から聞いていたが、今回話して彼の別の一面を知った。地元では、元暴走族のリーダーが厳しい境遇の子どもたちを支援するNPOの活動が著名だが、彼はその立上げメンバーなのだという。その関連で国の審議会に呼ばれたり、シンポジウムを企画したりしているそうだ。そういう子どもたちや同僚の教師のための活動を、彼はまったく手弁当で自己宣伝とは無縁におこなっている。

もう一人は、まだ教師になって4年目の20代の先生。初年度には悩んで体調を崩し、教師を辞めようとまで思ったという。その時彼を救ったのは、ある勉強会の先生たちの温かさだった。そのかかわりのおかげで、その分野での県のリーダー格の教師たちとの付き合いがうまれ、自主的な勉強のために勤務外で遠方の学校まで出向いたり、全国的な研究大会にかかわったりする生活を送っているという。この努力がきっと、先ほどの先生のように、子どもたちや学校の同僚のために役立っていくことだろう。

誰も自分の子ども一人の教育にすら手を焼き、社会的にはコミュニティの維持にすら打つ手がない状況だ。にもかかわらず、公教育には、すべての子どもたちの健全育成と、いじめのない理想的なコミュニティの実現という無理難題が社会やマスコミから強迫的に求められ、無責任なパッシングに常にさらされている。こんな過酷な環境のもとで現場を支えているのは、先生たちの自主的な学びや活動、使命感によるところが大きい。ただ頭が下がる思いだ。