大井川通信

大井川あたりの事ども

お饅頭のリレー

初任給が出たとき、次男は卒業した特別支援学校に、お菓子をもってあいさつに行った。もちろん親がアドバイスして、学校まで車で送り迎えもしてあげたのだが。学校の職員室と、寮の職員室との二つ分の菓子折りをもって、次男は、ひさしぶりの先生と照れくさそうに話していた。

そのあとしばらくして、就職でお世話になった先生を夫婦で訪ねた。その先生は息子の卒業と同時に、遠方の学校に移っていたので、ドライブがてらあいさつにうかがったのだ。「おかあさん、心配なことがあったら、いつでもいいから電話してください」と携帯を教えてくれて、将来どんなことでも母校が相談にのると請け合うような仕事熱心な先生だから、精神面が少し不安定な妻には本当にありがたい存在だった。次男が正社員で就職できたのも、おそらくその先生の奔走のおかげだと思う。

門脇の倉庫に、イワツバメが営巣している長閑な学校だった。イワツバメの巣は、とっくりの形をして天井に張り付いている。〇〇君が初任給で買ってくれたお菓子です、とその先生の手元にも、例のお菓子の一つが届けられたそうだ。学校の教師はとやかく言われがちな職業だけれども、そんな純粋な気持ちのかけらを人知れずリレーするようなことは、先生にしかできないだろう。