大井川通信

大井川あたりの事ども

虫の目、鳥の目、魚の目

虫の目と鳥の目の対比を始めて知ったのは、高校生のとき読んだ小田実の対談本だったと思う。小田は石原慎太郎に言う、お前は鳥の目だけれども、オレは虫の目でいくよ。それ以来、虫の目と鳥の目は、ミクロとマクロに一般化されて、議論には必要十分な武器であると信じて疑っていなかった。

先日、著名な経済人の講演を聞いて、ビジネスの世界では、魚の目が追加されていることを初めて知った。たしかに海流や潮流にさらされている魚の目は、「流れを読む」比喩としてふさわしい。なるほど、現場にいくら密着しても、また全体的な社会経済の知識をため込んでも、市場の動向を知らなければ倒産の憂き目にあうだろう。

社会哲学的に言えば、近代は「人間の目」と人間が奪い取った「神の目」との二刀流で済んだけれども、リキッドモダニティたるポスト近代においては、流動をとらえる「資本の目」が最重要になるということだろうか。