大井川通信

大井川あたりの事ども

伊東忠太二冊

東京帰省時は、国分寺北口の小さな古本屋に寄るようにしている。神田や早稲田の古書店街に寄る気力や関心は、もはやない。ネットでたいていの古書が手に入るし、それも綺麗なのにはびっくりする。勝手な推測だが、僕が若い頃欲しかった本を購入した年長世代が鬼籍に入り、丁寧に保管していた蔵書が市場に出回っているせいかもしれない。

ただ、古書店の棚で実際に、目当ての本に出会う喜びはすてがたい。国分寺近辺は大学も多いし、サブカルの伝統もあって読書家も多いはずだが、南口の何軒かの古本屋は廃業してしまった。そのせいか店の棚のレベルも高く、回転も早い。今回は、前から欲しかった建築家伊東忠太の関連本が二冊、美本でしかも安価で並んでいて、狂喜した。

一橋大学に立ち寄ると、大学祭でにぎわっている。国立キャンパスは、忠太が設計に関わっていて、校舎のあちこちに、彼のデザインした不思議な妖怪や動物が石に刻まれている。バンド演奏やひっきりなしの雑踏を前に、妖怪たちも戸惑い気味だった。