海に近いこの地方では、松や杉などの常緑樹に混じって、すっかり葉を落とし、枯れ枝に鈴なりの実をつけたセンダンの木が目立つようになった。サクランボより小さな黄色っぽい実が、太陽の光を浴びると金色に輝いて意外なほど美しい。
鳥見の会に参加して、まずおぼえたのがこのセンダンだった。冬の林で、ヒヨドリやムクドリなどが群がる姿を見かけることも多い。しかし、このセンダンの木は、冬真っ盛りの今でもかなりの実をつけているし、早春まで実が落ち尽くすことはない。図鑑を見ると、鳥たちもそれほど好んで食べるわけではなさそうだ。餌の不足する季節の、あまり美味しくはない非常食といったところか。
普通に考えれば、できるだけ美味しい実を提供して、鳥たちに競って食べてもらった方が、樹木の生存競争には有利な感じがする。しかし、それではライバルが多いだろう。まずいけれども日持ちのする実を、競合店のいない冬季に細々販売し続ける、という戦略が功を奏しているのかもしれない。