大井川通信

大井川あたりの事ども

池のほとりで(事件の現場4)

たまに散歩したり、駐車場でつかったりする小さな公園で、酔った大学生が池に落ちて亡くなったという。先日も学生が罰ゲームか何かで防波堤から海に飛び込んで命を落としたという報道を目にしたが、こちらはよく整備された浅い池だ。大学4年生というから、卒業や進路もきまっていたのかもしれない。昨年長男が大学を卒業したばかりだから、家族の気持ちもわかって身につまされる。

僕にも大学時代、二十人ほどの語学のクラスで、そのうち二人が若くして亡くなるということがあった。一人は病気だったが、もう一人は、新聞を深夜トラックで遠方に運ぶバイトの途中、高速道路で事故を起こした。葬儀のとき、学友と校歌を歌って送り出した時の様子がありありと思い浮かぶ。あれから僕の方は、生き延びてたくさんの経験をしたのはまちがいないが、実際に死を前にしたら、それもすべて幻のように感じる気がする。

とくに若い時は、まだ世間もしらずに無謀だから、誰もがたくさんの危険と隣り合わせだろう。非情だが、運が悪かったとしか言えないところがある。

池のほとりには、おそらく学友たちが供えた花や飲み物などと、寒さを気づかってのものだろう、使い捨てカイロが置かれていた。