大井川通信

大井川あたりの事ども

「きゃりーぱみゅぱみゅ」の言い方

6、7年前にきゃりーぱみゅぱみゅが歌手で大ブレイクした頃、名前をかまずに言う裏技がラジオなどで話題になっていた。その時、自分が気に入った二つの方法を覚えて、機会を見つけては得意になって人に吹聴していた。さすがに今では旬を過ぎているが、秘蔵のネタとして、思い出して会話で使うことがある。

理解するために一番良い方法は、それを他人に説明することだそうだが、僕は自分が面白いと思ったネタは、臆面もなく人に話してしまう。板(舞台)にかける、というと大げさだが、相手の反応をみて、徐々に話法が洗練されるし、記憶にもしっかり定着していつでも引き出せるようになる。大の大人でこうしたことを心掛けている人は、あまり多くはないようだ。小学生の頃から、手品を見せることが趣味だった影響なのかもしれない。

ただ、ネットの時代には、この手の小ネタや小技の正体は、すぐに検索で明らかになってしまう。それが残念だったり、時にはありがたかったりするわけだが、「きゃりーぱみゅぱみゅの言い方」でざっと調べると、僕の覚えた二つの方法のうち一つは必ず出て来るが、もう一つは見当たらない。

必ずあるのが、ドラえもんが秘密の道具を出すときの口調でいう、というものだ。もう一つは、片手の手のひらでアヒルの口をつくり、パクパクさせて腹話術の人形のようにしゃべらせる、というやり方だ。たしかにこちらはちょっと説明がわかりにくくなる。

なぜこの方法で言いやすくなるのか。ネットにはない解釈を試みてみよう。きゃりーぱみゅぱみゅが言いにくいのは、日本語の通常の使用では使うことのない音の並びだからだろう。慣れないことを、いつも通りのやり方(スピード)でやろうとするから噛んでしまう。逆にふだん意識していない口の動きを意識してつくろうとしても、かえってぎこちなくなって噛んでしまう。

一語一語区切って発音するようなモデルを作って、それに合わせて発音すると、言いなれない音のつながりを、復唱という身についたやり方でクリアすることができる。それではモデルをどうするのか。一方は、ドラえもんというおなじみのキャラクターを観念的にイメージする。もう一方は、腹話術のアヒルを片手で物理的に作り出す。二つの方法は、同じ原理を観念と身体という異なる方法で具体化していることになるだろう。