大井川通信

大井川あたりの事ども

宇宙ロケットの引退

小学校の夏休み、アポロ11号の初めての月面着陸(1969年)を、テレビ中継で見たのを覚えている。目覚ましい宇宙開発を背景にして、当時の公園には、宇宙ロケットの姿をした遊具が設置されるようになった。大井川の周辺でも、ロケット型の滑り台のある通称ロケット公園がある。ただし、その遊具はロープで囲われて使用禁止だ。半世紀近い年月を経て、とっくに耐用年数を過ぎてしまったのだろう。

6年前に、枝光で長期の演劇ワークショップに参加したときに、公演用にグループで寸劇を創作した。近所には宇宙をテーマにした遊園地スペースワールドがあり、そこには大きなスペースシャトルの実物大模型がそびえたっている。その遊園地に勤務する風変りなロケット学者が、地域の盆踊りで使う木のやぐらを見て、本物の宇宙船だと騒ぎたてるという設定だった。スペースワールドは、製鉄所の跡地に1990年に開業している。鉄冷えを受けて、バブルの時代のリゾート開発の産物だったが、昨年末にふいに廃業してしまった。

久しぶりの枝光を歩くと、無人の遊園地の敷地内ではすでに遊具の解体が始まっていた。ジェットコースターのレールは工場のパイプラインのようだし、カゴをはずした観覧車は、巨大な工業用ファンのようだ。色褪せた張り子のスペースシャトルも見納めだろう。町裏の小さな公園には、アポロの月着陸船型遊具がひっそり着地していて、勝手にワークショップの形見みたいに思っていたのだが、それも撤去されてピカピカの滑り台に代わっていた。