大井川通信

大井川あたりの事ども

なるように、する(原田一言詩抄)

久しぶりに、大井村の賢人原田さんのお店に顔をだす。原田さんは、2年前から幼稚園で用務員をしているから、朝晩に保護者の車の誘導の仕事があり、店も不在がちだ。今はイモ畑を作るように頼まれているという。幼稚園の敷地のはずれの新しい小屋のことを聞くと、それも原田さんの作品だそうだ。プロの大工顔負けで驚く。

はたから見ると、なんでもできる便利屋さんだろう。だから、「役に立つことができなくなってからが勝負だな」という原田さんのさりげない言葉にどきっとした。

普通なら、役に立てる間がかんじんと考える。しかし、役割があると、その役割の範囲でしか人とつきあえない。まったくの役立たずになってからの方が、一人の人間として、本領を発揮できるという意味だろう。賢人ならではの言葉だ。

店の隅でほこりをかぶった墨書きのカードをめくってみると、「なるように  する」という言葉が目にとまった。シャレのようだが、深い。人間は、目的を定め、効果をねらって、まさに「する」ようにする。しかし、自然や世界は「なる」ようにしかならない。老いて、役立たずになり、死ぬ。そういう残酷な「なる」の世界を、そっと我が身で受けとめるように「する」、ということか。