大井川通信

大井川あたりの事ども

どんどんかわっていくよね、かわらんと困るから

JRの車両で、向かいに座った老夫婦が、車窓風景をながめながらつぶやいた言葉。

40年前、50年前の思い出話をしながら、このあたりは田んぼだったのに、住宅街になってしまった、という。それを嘆くという風ではなくて、「変わらんと困る」と言い添えたのが耳にとまった。

僕自身がそうだが、今は、過度の自然の開発やそれによる経済成長に抵抗を感じる人々が増えてきているだろう。自然破壊にはとりあえず眉をひそめる方が、無難な時代なのかもしれない。

しかし老夫婦は、開発やそれによる便利さの恩恵を、目に見えて享受してきた世代なのだと思う。彼ら以降の世代といっても、その恩恵の上に生活していることには変わらない。エコを信条としているつもりでも、高速での大量輸送手段に疑問なく同乗しているわけだ。

夫婦の屈託のない会話に耳に入れながら、この時代の核心ともいえる感覚に、ふと思い当った。