大井川通信

大井川あたりの事ども

トンビとカラス

テレビシリーズの日本昔話に、こんな話を見つけた。

昔、鳥はみんな白かったという。トンビの田んぼの田植えを、鳥たちみんなが手伝いにきたりするのは微笑ましい。村人の似姿だ。そのときに、連れてきたヒナたちが、親を間違えてついて帰ってしまう。

村のリーダーとおぼしきトンビは一計を案じる。白い羽根を別の色に染めれば、ヒナがも見違えることはないだろう。トンビ夫婦は染料を用意して、鳥たちを希望通りの色に染めていく。夜までかかって村の鳥の全ての羽を染めた頃に、怠け者のカラスがようやくやってくる。いろいろ注文をつけるので朝までかかってきれいに染めたのだが、疲労でふらふらのトンビが黒の染料の器を落としてしまい、予想通り、カラスを真っ黒にしてしまう。怒ったカラスがトンビを追い回し、人(鳥?)のいいトンビは謝りながら逃げまわるようになった、というお話。

トンビは、カラスより一回りも二回りも大きい。しかも猛禽類の鋭いくちばしと爪を持っている。それが、群れに追われるならまだしも、一対一でもカラスに追い立てられるままになっている。昔の人にも、それはいかにも不思議でもどかしく感じられたのだろう。そこで、こんな物語をつくりあげて、説明をくわえようとしたのだろう。

物語の中では、カラスは怠け者で、わがままで、かんしゃく持ちに描かれている。頭の良いカラスは、村の暮らしでもやっかいものだったにちがいない。