大井川通信

大井川あたりの事ども

笹の葉ラプソディ

涼宮ハルヒの消失』からの流れで、七夕にちなんで、ハルヒのアニメシリーズの『笹の葉ラプソディ』を観なおしてみた。

アニメは、大学時代に『装甲騎兵ボトムズ』にはまったのを最後に、ガンダムエヴァンゲリオンも見ていない。ようやく数年前に、たまたま有名だからという理由でハルヒを手に取ったときにも、初めは五分おきに再生をストップして、何度も見るのをやめようかと思ったくらいだ。
やがて、高校生のリアルな日常と、宇宙レベルのストーリー展開(セカイ系、というのだろうか)が新鮮で、夢中になった。ただし、ハルヒの良さは、ハルヒ自身が自分のとんでもない力に無自覚なために、宇宙人でも未来人でも超能力者でもない、平凡な高校生のキョンとの関係が物語の軸となっている点だ。ハルヒは、なぜキョンを選んだのか。この回では、その理由が半ば種明かしされる。
3年前の七夕の夜、中学一年生の涼宮ハルヒは中学の校庭いっぱいに謎の象形文字のメッセージを描くという事件を起こす。夜の校庭でその作業を手伝ったのが、未来人みくるの導きで、3年前の世界に送り込まれたキョン自身だったのだ。その時のキョンの言葉をきっかけに、ハルヒはやがて北高に進学し、SOS団を結成することになる。
みくるは相変わらずオロオロし、長門は寡黙に困難な仕事をこなし、小泉は傍観者というふうに、この20数分にはシリーズのエッセンスが詰まっている。中学一年生のハルヒが校庭に残したメッセージが、実は宇宙語で「私はここにいる」だというのも、意味深い。その祈りの現場に居合わせたのが、キョンだったということも。
僕たちも、実はハルヒのように、この世界の中心として、この世界の色調を変えたり、この世界を終わらせたりする力を持っている。しかし、それゆえに、この世界ではハルヒのように孤立して自分をもてあまし、「私はここにいる」と遠い誰かに向けて祈らざるを得ない存在だ。しかし、そこで救いとなるのは、たまたま居合わせただけのクラスメートや隣人や家族とのありふれた関係だったりする。ハルヒの一見荒唐無稽なストーリーの魅力は、この間の機微をしっかりつかんでいるところにあると思う。