大井川通信

大井川あたりの事ども

9469060522

亡くなった父親は、ちょっとした小物などでも、目立たない場所に購入日を書き込む習慣があった。数字の羅列なのだが、まずは西暦の下二桁。つぎに元号、そのあとに月日がつづく。

しかし、今回、小さな収納箱の引き出しの裏に、表題の長い数字の並びを見つけた時には、めんくらった。西暦94年の次の二桁はいったい何だろう。少し考えて、昭和だったら69年という意味だとわかった。次に平成6年、5月22日とつづく。

大正13年生まれの父は、実年齢と昭和の年数とがぼぼ同じだった。昭和という時代には、強い愛着があったのだろう。戦中派の経験からの戦争や天皇への嫌悪も、昭和への愛着も、総じて日本への愛憎は肉体に刻み込まれたものだった。

そういう世代もほぼ退場してしまって、今は愛国をうったえる言葉も、やみくもに日本の体制を批判する言葉も、ひどく軽々しく宙をまう。