大井川通信

大井川あたりの事ども

天体望遠鏡の話

実家の片付けをしていたら、押し入れの奥に細長い段ボールが立てかけてあるのを見つけた。すっかり忘れていたが、小学生の時に買った天体望遠鏡である。

アポロ計画をはじめとする宇宙開発にも影響されたのだろうが、当時の子どもたちの間で、天文学や天体観測は、人気のある趣味だった。学研の科学雑誌の付録の天体望遠鏡では満足できずに、デパートのカメラ屋に、本物の望遠鏡を見に行って、持ち帰ったカタログを穴があくほど眺めていた。ニコンや高橋製作所など各メーカーの人気機種を覚えたり、マニアックに接眼レンズの名前とそのレンズの構成を紙に書いて記憶したりした。オルソスコピックやケルナー等々。

そうしてようやく手に入れたのが、固定式の三脚と、シンプルな経緯台、何の付属品もついていない一番安価な屈折式の望遠鏡だった。それでも、色消しの40ミリの対物レンズの焦点距離は800ミリあって、細長く白い鏡筒は、一応天体望遠鏡らしく見えた。当時、どんなにうれしかったかを思い出すと、捨てるわけにはいかない。

ミザール望遠鏡 ニューコロナ型 4,500円

自宅に届いた愛機を40年ぶりに組み立てて、保存していた展示用の正札を、くすんだ鏡筒にかけてみる。デパートの展示品みたいにりりしく見えるのは、親ばかみたいなものなのか。