大井川通信

大井川あたりの事ども

虹の足

通勤で川沿いの道を車で走っていると、にわかに雨が強くなる。すると正面に虹が見えたので、道路わきの神社の大きな駐車場に車をとめて、観察することにした。

はじめは右半分くらいしか見えていなかったのだが、いつのまにかうっすらときれいな半円を描いている。とくに左側の足は、200メートルばかり先の、丘のふもとの集落のところから立ち上がっているのがはっきり見える。そのあたり、瓦屋根がうすく虹色に染まっているのだ。

虹は雨粒に太陽光線が反射して起きる虚像である。だから、ここからそう見えるからといって、実際にあの集落のところから虹色の橋が立ち上がっているわけではない。蜃気楼の逃げ水が、いくら近づいても遠のいてしまうのといっしょだろう。

とっさに頭の中でそんなことを整理してしまうくらい、虹の足元を実際に見た衝撃は大きかった。生まれて初めてのような気がする。うろ覚えだが、虹の足元には宝物が埋まっている、という言い伝えもあった気がする。昔の人が特別なメッセージを読み取るのも無理はないと思えるくらい、不思議な光景だった。