大井川通信

大井川あたりの事ども

あっこさんの宿題

ちかごろは、宿題だらけの世の中だ。

職場の近くのカレー屋さんで、地元の知り合いとランチを食べる。店はアジア風の雑貨屋さんのようで、壁には様々な絵が描かれている。知り合いの行きつけだから入ったが、ふつうなら敷居が高い。

最近何周年かのイベントがあって、そのとき作った小さな缶バッジを見せてもらった。デザインは店主のあっこさん(表記は正確にはわからない)が描いたもの。一番のおすすめを購入する。

カラフルなデザインの缶バッジの中で、意外とシンプルな線画をあっこさんは選んでくれた。フリーハンドのぎざぎざの輪がいくつか重なっていて、中心には小さな渦巻がある。その渦巻きの場所に行くためにはどうしたらいいか、を考えるためのものだと彼女はいう。まるでカレーの具材を説明するみたいに、あっけらかんとした調子で。

曼陀羅のような、世界の設計図みたいなものなのか、あるいは真理への地図みたいなものなのか。それにしてはあまりに雑すぎる。

なぜそこにいかないといけないのだろう。そこにいくためには、とりあえず自分をはなれないといけない。たしかに、いつまでもこの自分の世界にいられるわけでもない。おそらくは離別は唐突で、不条理だ。そのとき、昔の人が考えた浄土みたいに精巧で美しい世界が立ちあらわれるとも考えられない。

小さな缶バッジをながめながら、僕は渦巻きにのみこまれていく。