大井川通信

大井川あたりの事ども

子猫とてんかん

数日前、夜中こたつで本を読んでいたら、子猫のハチのゲージがガタガタとすごい音で鳴り始めた。ハチが目をあけたまま、身体を痙攣させている。手足を見たことのない動作でバタバタさせている。のたうち回って、トイレの砂が、大量に床に飛び散る。

どうしたらいいかわからず、声をかけた妻が起きてきた頃には、だいぶ収まってきていた。長く感じたが、数分の出来事だったのだろう。発作の激しさを見ていない妻は、ブツブツ文句を言ってまた寝てしまった。

ネットで調べると、何か良くないものを食べてしまったりしたことが原因の場合もあるそうだが、先天性のてんかん発作の可能性が大きいようだ。動画で見ても、発作時の様子はとてもよく似ている。発作を抑える投薬治療は受けられるみたいだ。

幼稚園の頃、言葉が遅れている次男にてんかんの発作が出た。一生治療が続くものと覚悟していたが、ある時、小児てんかんで数回の発作のあと症状が治まる症例が最新の研究で報告されていると担当医師から教えられた。

幸いなことに、次男はそのケースに当てはまり、中学の頃には寛解と判断されて、薬も不要となった。けれどその時まで、特に母親の心労は大変だったと思う。

去年のクリスマスの前に我が家に迷い込んできた子猫のハチは、できれば一過性の発作であってほしいが、治りにくい病気であることも覚悟しないといけないだろう。ふだんは元気で無邪気な様子を見ると、やはり暗い気持ちになる。

それなりに長く生きてきてわかったことは、人間(を含む生物)が、壊れ物だということだ。傷を受け、それを耐えながらも、さらに傷を受け続け、やがて最期を迎える存在だということだ。

次男は知的な障害と向き合いながら仕事を続け、妻は癌の再発におびえている。記憶障害をかかえる僕もいつどんなことになるかわからない。しかし、それらは少しも「特別なこと」ではないのだ。もしハチがてんかんであったとしたら、我が家の新しい家族にいっそうふさわしいかもしれない。

ともに肩を寄せ合って、ときに見苦しくケンカをしながら、生きていこう。