大井川通信

大井川あたりの事ども

棟梁の仕事ぶり

玉乃井DIY講座で、今日は、ホコラの建具(扉)の制作を手伝う。もっとも、細かい作業になれば、僕などいっそう戦力にはならない。指示通りにほぞやほぞ穴の墨入れ(といっても鉛筆書きだが)をしたり、丸鋸で切り込みを入れてもらった後に、カンナで余分の材を落として、ほぞを出したりするくらいだ。

この何回かの講座で、師匠の大工さんの仕事ぶりで、素人なりに感心したことがある。一つには、常に仕事がやりやすいように頭を使っていることだ。その場その場で、合理的で楽な方法を見つけては、手早くこなしていく。

それが特に現れるのは、失敗したときのリカバリーの態度と方法である。どんなベテランでも仕事の途中で、勘違いや想定外の事態がおきてしまうのは避けられない。そんな時、僕などは、失敗を悔いたり、嘆きの声をあげたり、しばらく不機嫌になったり、場合によっては他の誰かにあたったりしてしまうだろう。

しかし、師匠はそんなとき顔色一つ変えずに、最小限の労力で復旧できる方法を見つけて、あたかも何事もなかったかのようにその作業にとりかかるのだ。実にたんたんと。そして失敗が余計な作業を生んだとしても、まるで当初から予定されていたかのように平然とこなしていく。

こうした仕事ぶりは、おそらく人生の様々な場面でも、いいことも悪いことも同じように受け入れて、自分のやるべきことを見出す態度につながるのではないか。暗黙の人生修行の場でもあるような仕事場が、あらためてうらやましくなった。