大井川通信

大井川あたりの事ども

『初心者のための天台望遠鏡の作り方 屈折篇』 誠文堂新光社 1967

子どもの時の懐かしい蔵書シリーズ。ブルーの地味な表紙の薄い本と、再会を果たせて感無量だ。

1940年生まれのエコノミスト野口悠紀雄さんの本に、子どもの時、天体望遠鏡を自作したことが書いてある。おそらく、1950年代には、レンズ等を購入して、あとは自作するのが、天文好きな子どもには普通のことだったのだだろう。

本の中身は、書籍や雑誌からの記事を集めたもので、こんな調子の本文が続く。

「Nさん、いよいよお小づかいがたまって望遠鏡をつくられるとのこと、よかったですね。一生けん命に小づかいをためて望遠鏡を作り、星をのぞくよろこび。Nさん、これは星を愛する者にとって最高のよろこびでしょう」

僕が星に興味をもった頃は、1970年代に入っていたから、デパートには安価な子ども向きの天体望遠鏡の入門機が並んでいる時代だった。はじめて手にした望遠鏡は、学習雑誌の付録を組み立てたものだったけれど、お年玉をつかって一番安いメーカー品をデパートで買ったときは、本当にうれしかった。(その簡素な三脚の望遠鏡は、今目の前に置かれている)

それでも、この本を見ながら、自宅にあった古いレンズを組み合わせて、小さな望遠鏡を手作りした思い出がある。ラムスデンという形式の接眼レンズを作って、それが実際に使えたときには感激した。

おそらく今では、よほどの趣味人でもなければ天体望遠鏡の自作などしないだろう。モノづくりの時代の証言者のような小さな本だ。