大井川通信

大井川あたりの事ども

弱さは強さ

勤務先に次男を迎えにいくついでに、駅近くのアーケード商店街を歩く。夕方近くというのに、人はほとんど歩いていない。開いている店が十軒に一軒もないような、文字通りのシャッター街だ。それが延々と続く。

別の商店街に入ると、こちらはさらに老朽化しており、狭く薄暗い。所々店が撤去した後だけがぼうっと明るい空き地になっている。長大な恐竜の化石の骨格標本の中を歩いている気分になる。

商店街の繁栄を支えた炭鉱が閉山したのは、50年近く前の話だ。その後、しばらくは鉱害復旧の名目の資金が命綱となっていたのだろう。ショッピングモールの開発など郊外化の潮流が、この街の中心街にトドメをさしたのだ。

閉じたシャッターに、白いペンキで、弱さは強さ、と大きく書かれている。しかし、ここで問われているのは、単純な強弱の問題ではないだろう。巨大な時代の前進に取り残され、かき消される側のいわば「実存」の問題であるような気がする。

何か探してます?

僕が、人気のないアーケードの下をさまよっていると、買い物客らしき老婦人が、親切にも声をかけてくれた。それほど、人が珍しいのだ。