大井川通信

大井川あたりの事ども

三題噺の行方

今年になってから、気の合った同世代の友人との勉強会を続けている。月に一回、事前に日にちを決めて、ファミレスで4,5時間話をするだけの気楽な会だ。気楽だから、何の準備もないとただのお話会となってしまう。そこで、お互い、この一カ月の報告もかねて、何か書いたものを持ち寄ることにした。

僕は、一か月分のブログから三つくらいをピックアップして、多少手を加えてA4二枚に収め、それを勉強会のレポートにするようにしている。これなら簡単に、それなりにレジュメらしきものを作ることができる。書き散らしたブログの有効活用にもなる。友人は、たんねんにネットを見るようなタイプではないので、僕のブログには気づいていない。これも幸いだ。

今月は、「『ノンちゃん雲に乗る』」「町家でごろごろする」「コンビニで手塚治虫を読む」の三つの記事を選んでみた。選ぶ観点は、比較的まとまっていて新味があり、友人の関心にもあいそうなもの、ということになる。すると、他意はなかったのだが、三つの文章が、異類(異者)とのかかわりという共通点を持つことに気づいた。

手塚治虫をはじめとする初期の少年漫画が、繰り返し子どもと異類との交渉を描いてきたこと。ノンちゃんが雲の上で出会ったおじいさんもまた、異類といえる。ノンちゃんは異類の住む雲の上から、日常の暮らしを見返して、あらためてその輝きを見直すことになる。現代人にとって、町家などの伝統建築は、もはや異類といえる。しかもそこは、雲のうえのように身体を包み込んでくれる懐かしい時空間だ。座敷に横たわりながら、遠い玄関口に切り取られた往来の日常をながめると、なにげない路上が無性に懐かしい場所に思える。

学者でも専門家でもない僕は、暮らしのなかの驚きや発見をつなげて、すこしづつ了解を深めていくしか方法はない。このレジュメの作成方法は、手がかからないばかりでなく、そんな僕の考えのすすめ方にもかなうような気がしている。